●新作は行き過ぎた姉弟の愛情?

――映画監督として、そのような状況に対しては、どう思われますか?

 結果的にTVドラマ中心になりましたが、僕の立場としては振ってくださったお仕事を一生懸命やるしかなかったんです。ただ、自分が思ってもいない企画や脚本を、さらに面白くするため、いろいろ考えたので、今となってはいい経験になったと思います。だからこそ、映画監督としては9年ぶりの新作ですが、土屋太鳳さんと田中圭さんが自分のオリジナルである『哀愁しんでれら』に出てくださるという、商業映画デビュー作としては最高のステージに繋がったんだと思っています。

――ちなみに、『哀愁しんでれら』は「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」でグランプリ受賞した企画です。

 正直な話、受賞の翌年末には撮影して、18年には公開できると思っていたのです。でも、テーマ的な問題があったり、「やはり泣ける展開にしてほしい」という意見もあったりして、2年間ぐらい本格的に動かせなかったんです。そのため、いろいろと脚本の内容も変えたりもしました。でも、最終的には元の脚本に近い状態で撮影することができました。撮影日数も短くて苦しかったですが、多少のわがままを言わせてもらいながら撮ることができたので、当初から考えていた『哀愁しんでれら』として完成したと思います。

――今後の展望や目標、次回作の予定などがあれば教えてください。

 特にオリジナルにこだわるつもりはありませんが、今後も物語を大切にしたエンタメ作品を作っていきたいです。20代から脚本メインでやってきたなかで、監督になったという強みもあるので。

 『かしこい狗は、吠えずに笑う』での友だち、『哀愁しんでれら』での家族に続く、姉弟を描いた作品を長年企画中なので、“行き過ぎた愛情3部作”を完結させたいです。

 大きな夢でいうなら、なかなか厳しい環境の日本から出て、海外で撮りたいです。

渡部亮平(わたなべ・りょうへい)

1987年8月10日生まれ。愛媛県出身。立命館大学卒業。10年、ドラマ「アザミ嬢のララバイ」で脚本家デビュー。12年、初監督作『かしこい狗は、吠えずに笑う』が「ぴあフィルムフェスティバル」にて、エンタテインメント賞&映画ファン賞をW受賞。その後、「セーラーゾンビ」「時をかける少女」などのドラマ脚本を多く手掛ける。

『哀愁しんでれら』

児童相談所に勤める小春(土屋太鳳)は平凡な毎日を送っていたが、ある夜、不幸に見舞われ全てを失ってしまう。人生を諦めかけた彼女の前に、8歳の娘を男手ひとつで育てる開業医・大悟(田中圭)が現れる。優しく裕福で王子様のような大悟に惹かれた小春は、不幸のどん底から一気に幸せの絶頂へと駆け上がるが……。
https://aishu-cinderella.com/
全国公開中。
©2021『哀愁しんでれら』製作委員会

Column

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2021.02.08(月)
文=くれい響
写真=佐藤亘