副音声の裏トークは録画視聴すべし
副音声で聴ける実況トーク「紅白ウラトークチャンネル」も必聴です。こちらでは主音声では伝えきれない出場歌手の魅力や、舞台裏でのハプニングなども伝えてくれます。
今年の担当は昨年に続き山里亮太&渡辺直美。昨年は歌に勝手に合いの手を入れたり、度々登場するゲストと話で盛り上がったりとやりたい放題な姿勢が最高でした。お茶の間と同じ温度で盛り上げてくれます。そうは言っても歌もしっかり聴きたい! そんな人には番組録画をおすすめ。リアタイでは主音声のまま、後日に録画した番組を副音声で、文字通り二度紅白を楽しみましょう。
また、もっとストイックに歌手の力量のみを楽しみたいなら、あえてのラジオ視聴もおすすめです。テレビを消し、周波数をNHKラジオ第1に合わせましょう。アナウンサーがアーティストの紹介や場面解説を曲の合間に入れてはくれますが、ほぼ歌に集中できます。ラジオは画が見えない分想像力が働くため、より心にぐっと来るものがあります。「NHKラジオ らじる★らじる」アプリを入れておけばスマホからでも視聴可能。よく考えると、大晦日にラジオ放送を聴きながら働いてくれている方もいるんですよね。すべての人にとってかけがえのない番組なんだと改めて感慨深くなります。
紅白が男女対抗である意義はある?
最後に、番組の趣旨についても考えてみましょう。紅白といえば、近年男女分けされた装置であることの違和感もささやかれます。ではなぜ男女対抗の歌合戦が生まれたのでしょうか。そもそも紅白誕生は、GHQから歌番組をつくるように指示が下ったことがきっかけでした。
当時GHQは戦後の5大革命のひとつに「婦人解放」を掲げていました。そこで男女で体格や体力差に関係ない、歌で戦う番組をNHK側は提案します。男尊女卑的思想を取り払い、自由競争社会のシンボルとなった番組が、紅白歌合戦だったのです! そこには歌で男女平等を実現したいという思いがあったんですね。
しかし近年、音楽と性の多様化の問題で単純な男女分けは難しくなってきています。星野源も「おげんさんといっしょ」の中で「紅組も白組も性別関係なく、混合チームで行けばいいと思うの」と持論を語っていました。2年連続で紅と白を混ぜたピンク色の衣装を着ていたことも、何かしらのメッセージでしょう。
紅白側も00年代半ばごろからは「男女対抗」というコンセプトが薄められるような取り組みを行ってきています。ガレッジセールのゴリがゴリエとして紅組から出場(05年)、和田アキ子が「m-flo loves Akiko Wada」名義で白組から出場(05年)、トランスジェンダー歌手の中村中が紅組から出場(07年)、男女混合グループAAAは白組から5回、紅組から2回出場するなど話題になりました。
とはいっても、組の基準は性自認なのか見た目なのか曖昧なまま。それに端からアーティストが自身のセクシャリティを公表する必要はないですよね。男女二元論で語る必要のない時代、組分けも転換期を迎えています。誰もが楽しめる紅白にもっとアップデートするよう今後に期待したいです。
朝ドラ「エール」では、「勝った人にも、負けた人にも、『頑張ったね、頑張ろうね、一生懸命な姿見せてくれてありがとう』って…」というセリフがありました。甲子園も、M-1も、紅白もそれは同じです。真剣勝負を楽しみにしつつも、最終的には感謝の拍手で年越しをしたいですね。そして少しでも明るい気持ちで2021年を迎えましょう!
綿貫大介
フリー編集&ライター。TVウォッチャー。著書に『ボクたちのドラマシリーズ』がある。
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2020.12.30(水)
文=綿貫大介