本来の見ものは、やはり人海戦術
人海戦術とは、多くの兵員を繰り出して、損害をかえりみずに数の力で敵軍を押し切ろうとする歴とした戦い方のひとつです。何度も言いますが、紅白は「歌合戦」ですからね。NHKホールの舞台上に(時には客席の通路にも!)、出演者、ダンサー、合唱団、オーケストラ、けん玉をする人など、数百人単位で勢揃いしている姿はいつも圧巻です。
また、番組のオープニングおよびエンディングでは、出場歌手がステージに一同に会すのも習わしです。トップバッターは出演者をバックに、大トリはみんながそでで見守る中で歌う。その絢爛豪華さに「これぞ紅白!」と興奮してしまいます。
しかし密になることをできるだけ避けなくてはならない今年は、肝心要の人海戦術が使えません。さらに無観客となると、画面が寂しくなりそうで不安があります。しかし無観客を逆手に取った演出を予定しているという情報もあるので、心待ちにしておきましょう。「NHKのど自慢」のように出場者がステージではなく客席で互いに距離をとりながら勢揃い、はたまた客席から誰かが歌うなんてこともあるかも?
中継アーティストが続出の予感
近年、中継の代名詞になっている福山雅治。ほかにも中島みゆきが黒部ダムから(02年)、ORENGE RANGEが沖縄市の空港通りから(04年)、MISIAがナミブ砂漠から(12年)、宇多田ヒカルがロンドンから(16年)、米津玄師が大塚国際美術館から(19年)……と各地で中継で出演するアーティストは増えています。また、特別枠で出場した安室奈美恵(17年)、竹内まりや(19年)などはあえてNHKホール近くの放送センター内にあるスタジオから生歌唱していました。
個人的には中継反対派です。できればNHKホールに来てほしい。トップバッターが歌う時はちゃんと後ろでにこやかに見守り、時々司会者の横に立って台本通りの寸劇をしてほしいのです(SMAPメンバーはよくそれを担ってくれていました)。18年の平成最後の紅白で、別スタジオで歌唱していた松任谷由実がNHKホールにサプライズ登場した際の会場の歓声、よかったですよね。aikoも感激で泣いていましたよね。やはり全員参加の紅白であってほしいです。
しかし、今年は先述の通り、大人数NG。人数を制限するため、パフォーマンス会場の分散も避けられません。NHKホール以外に局内のスタジオを積極的に使うなど、あえての中継歌唱が増えそうです。今回ばかりはみなさんの健康第一でお願いしたいので、素敵な中継を期待しましょう。
どうせならこの際ぜひ、日本中の人が極寒の地で年越しする人たちに想いを馳せる、南極昭和基地からの中継の復活もお願いしたいところ。
紅白ならではのスペシャルコーナーは必見
豪華アーティストたちが一致団結して盛り上げてくれる紅白で見逃せないのが、スペシャルコーナーです。
たとえば過去には出演歌手が輪唱するバラエティコーナー「紅白RING SHOW」(02年、03年)、出場歌手が旗揚げ対決をする「紅あげ白あげ紅白ハタ合戦」(04年)、羞恥心 with Pabo、平原綾香、青山テルマらが久石譲指揮で宮崎アニメ主題歌を歌う「ジブリ名曲メドレー」(08年)、SMAPがマイケル・ジャクソンの代表曲を披露した追悼企画「マイケル・ジャクソン スペシャルステージ」(09年)、ディズニーキャラ大集合で嵐、AKB48、関ジャニ∞、Perfumeがディズニーソングメドレーを披露した「ドリームステージ」(12年)、生放送ドラマと劇中歌の歌唱で感動を誘った「あまちゃん特別編」(13年)、審査員のタモリ&黒柳徹子もゲラゲラポーポーズで会場をわかせた「嵐 meets 妖怪ウォッチ」(15年)などがありました。
ただ近年は追加発表される歌手が特別企画として登場する機会が目立ち、スペシャルコーナーが目減りしがち。楽しみのひとつなので、ぜひ拡充お願いします!
2020.12.30(水)
文=綿貫大介