なおこの物件以外にも、居間とトイレの間がアコーディオンカーテンで目隠しされているだけのワンルーム(一部では「オシャレ独房」と通称されることも)などが実際に存在する。東京の過密状態は江戸開府以来の難題で、住まう側としてもとにかく住居費を抑えたいところ。「家賃が安い」という理由で借り手が付いているのだという。

 それならば……と、この「玄関=便所」の家に暮らす自分をイメージしてみた。日々の暮らしでは慣れないこともあるだろうが、強烈な便意に苛まれながらどうにか家にたどり着いた日には、この間取りをありがたく思うかもしれない……。そんな「ピンチ」ができるだけ訪れないことを祈るばかりだ。

 

「家の主」は飼い主かネコか…“主人”のための贅沢な分譲住宅(@東京)

 そこに住まうことになる施主の希望に沿って設計されるのが、注文住宅である。リビングルームであったり書斎であったりと、重視されるものは施主によってさまざまだが、この頃では「ネコに優しい」戸建てを注文する家族も多いらしい。

 そんなネコノミクス時代を背景に、ついに分譲住宅でも「ネコと暮らす」ことを謳う物件が登場した。天井は高く、吹き抜けにはキャットウォーク(ネコ用通路)が通されているため、ネコは縦横無尽にこの家を駆け抜け、家族団らんの場に飛び降りることもできる。

 キャットウォークの先にはネコ専用の扉まであるのだから、2階に陣取る一番広い洋間は、もしかしたらネコ様専用の寝室なのかもしれない。これでは誰が主人かわからない。

 古代エジプト以来、人類はネコを愛する文化を育んできた。イスラム教の開祖ムハンマドにも、ネコを溺愛したという逸話がある。「ネコのための戸建て」というのは、現代における人類のネコ愛の象徴なのかもしれない。

 

番外編:野球場に出現した「ナゾの住宅街」!その正体は…(@大阪)

 注文住宅の「対極」となる建売住宅。その選ぶ決め手になるのがモデルハウスだ。実物の住宅に家具・調度品を備え、新生活の見本を示すための施設である。

2020.12.01(火)
文=ジャンヤー宇都