2014年に日本で公開された映画『チョコレートドーナツ』が、宮本亞門さんの演出で舞台化される。物語はアメリカで実際にあった「母親に育児放棄された障害を持つ少年と、家族のように過ごしたゲイの話」が原案。

 常識を打ち砕く力強さを持ったドラァグクイーンのルディ役には東山紀之さん。その恋人・ポールを演じる谷原章介さんに、今作への想い、プライベートで子どもを持つ父親としての視点からの思いなどを伺った。

 俳優だけでなく、音楽やクイズ番組の司会者などで幅広く活躍する、まさしくオールラウンドプレイヤー。器用に何でもこなす彼の癒やしは、マンガを読む時間だという。

 その“オタクぶり”は一度スイッチが入ったらのめり込む、谷原章介の底知れぬエネルギーそのもの。世のおじさま方にお手本にしてほしい、オトナの男の素顔に迫る。


子役たちのエネルギーから刺激をもらう

――LGBTQへの差別や育児放棄といった社会問題に光を当てた映画『チョコレートドーナツ』を舞台でやる、というオファーが来たときの感想は?

 僕の気持ちを一番突き動かしたのは、高橋(永)くんと丹下(開登)くんという、2人の役者さんとご一緒できることでした。2人はダウン症があり、彼らがどういうエネルギーで、どういう佇まいでいるんだろうと。

 不遜な言い方かもしれないですけど、その刺激を受けることが楽しみであり、絶対に敵わないという覚悟が必要とも思っています。

――覚悟というと?

 2人はありのままの姿で舞台に立つので、それがとても「強い存在」になると思うんです。われわれ役者がテクニックや経験だけで突き進むと、偽物だとすぐにばれてしまう。

 僕らが気持ちを開き、本心で相対していかないとだめで、ハードルが高いと思っています。

――稽古はこれからと聞きましたが、2人には会ったんですか?

 高橋くんだけに会いました。やわらかい印象なので本番まで気持ちの持ち方を気にしてあげないといけない。

 もしかしたら、不測の事態が起こるかもしれないけれど、そのときは東山(紀之)さんをはじめ、周りは芸達者な役者さんばかりなので、どうとでもフォローできる。

 何が起ころうが、最後までストーリーを続けられる役者が集められたんだと思いました。

――2人との距離はどうやって縮めていくのでしょう。

 ただ隣にじーっといるところから始めてみようかな。慣れてきたら飴ちゃんをちょいちょいあげたりとか(笑)。彼らの好きなことを聞いたりしようかと思ってます。

2020.10.28(水)
文=CREA編集部
撮影=榎本麻美
スタイリング=澤田美幸
ヘアメイク=川端富生