約50年の歴史を持つアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』。その人気キャラクターに焦点を当てたムック『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねこ娘大全』『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねずみ男大全』が2020年3月3日(火)、2冊同時に発売!

 現在放送中の第6期は、子供向け作品でありながら、“ブラック企業”、“整形依存”、“ハラスメント”など現代社会の問題に積極的に切り込んでいる。

 刺激的な脚本がいかにして出来上がるのか、シリーズ構成の大野木寛にたずねた。

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#1 ねこ娘役 庄司宇芽香
#2 キャラクターデザイン・総作画監督 清水空翔
#3 ねずみ男役 古川登志夫
#5 池上遼一が語る水木しげる


妖怪を今の社会問題と結びつける

――今回の『鬼太郎』は、通算6度目、1期の放送開始から数えると50年目のアニメ化にあたります。作品作りにおいて、どのようなことを意識されましたか?

大野木 水木先生の世界を守りつつも、今風にしなくてはならない、と意識しました。

 原作自体が古いものですから、今を生きる子どもたちに観てもらうためには、いかに現代的なテーマと結びつけるか、ということを考えなければなりません。

――具体的には、脚本のどのようなところにその意識が現れていますか?

大野木 妖怪を今の社会問題と結びつけるようにしています。

 例えば、原作の連載が始まった1960年代は、地方は常に開発の対象で、話の中でも、開発によって、なにかの封印が解かれてしまって、妖怪が出てきて暴れるというパターンが多かった。

 しかし現代では、ある程度開発は終わっていて、そのような状況は考えづらい。

 いい例が、田んぼに住む妖怪の泥田坊ですね。

 原作では、泥田坊は開発ですみかを奪われて、「田を返せ」と言って暴れていたのですが、今回のアニメでは、田んぼだったところがゴルフ場になって、そのあとメガソーラー発電所になって……と、社会の変化によってどんどん使われ方が変わっている。

 でも、泥田坊が出てきて「田を返せ」と言うところは変わっていない。

――鬼太郎をはじめとするメインキャラクターたちの性格も若干変化しているように見受けられます。

大野木 これまでの鬼太郎は、熱血ヒーローとして描かれがちだったのですが、今回の鬼太郎はやや冷めているというか、一歩引いたところで物事を見ています。

 これまでは、鬼太郎が常に人間の味方だったから、熱血ヒーローたり得たのですが、今回の鬼太郎は、人間と妖怪の間に立つ者として描きたかった。

 なので、人間の味方をするときもあれば、そうではないときもある。それで一歩引いているキャラクターにしています。

 ねこ娘は頭身を伸ばしましたし。常に“今風”は意識していますね。

――『ねずみ男大全』の主役であるねずみ男に関してはいかがでしょう?

大野木 これが面白いことに、他のキャラクターはいじれるのですが、ねずみ男は変えられないんですよね。もちろん、アニメのシリーズや、各話を担当するライターによって微妙な差異はあります。

 でも、鬼太郎なんかに比べると変更は小さな幅にすぎません。ねずみ男は、やっぱりねずみ男なんです(笑)。

 ずるくて、金と権力に弱くて、ある時は鬼太郎の大親友、ある時は敵にこびへつらう。この“どっちつかずな感じ”をいじると、なんだかねずみ男ではなくなってしまうんです。

2020.03.03(火)
文=「文藝春秋電子書籍」編集部