盛り上がったあゆブームも
あの本の発売で……
浜崎あゆみは、「チームあゆ」を乗せた大きな船の船長として広い世界へと漕ぎ出し、時代の波で一気に沖まで流され、今なお陸を探して航海中、そんな感じに見える。
永遠に足が地につかない感こそあゆ。居場所がないからこそあゆ。
その歌は、私の心の中に残る「消化しきれなかった思春期」をガッスンゴッスン呼び起こし、切ないながらも甘い気分にしてくれるのだ。
音楽とは、本当にいつブームが来るか分からない。
昔腹立った曲が今救いになるなんてこともある。だからこそ楽しい、ありがたい。
さあ、次のカラオケは「Dolls」と「HANABI」あたり攻めるか……。
※ ※ ※
ここまで盛り上がっていた、マイ浜崎あゆみブーム。実はこの原稿も2019年の正月くらいから7カ月くらいかかって練り練り練り練り書いたものである。それをやっとさあ、編集部に送ろうとした矢先に、暴露風味小説のニュースが流れてきたというわけである。
ビックリして記事を読んで、訪れたのはガックリ。なーにー? MAX松浦との恋バナ?
「Mはマリアちゃうんかい!」
と一瞬でドッチラケてしまったのである。
そしてその5秒後、そんな自分に「どうした私!?」とオロオロした。我ながらビックリガックリビックリと大忙しで首が痛かったが、再度ビックリしたのには理由がある。
これまでなら「作り手の思いと歌は別」と分けて考えられる絶対的自信があったからだ。
ところが。浜崎あゆみに関しては違った。にわかファンにもかかわらず、なにこの気持ち。
やっと手に入れた自分の隠れ家に見知らぬオッサンが「実はここワシの部屋ですねん」とドカドカ入ってきたようなショック、ホワーイ?
短期間でここまで思い入れが強まり、客観視できなくなる浜崎あゆみ、恐るべし。
意外なことで意外なほどの彼女の伝染力を知った。
……とまあ、今さらジローなご報告になったが、アーティストとは、いろんな人の思いを背負う、すごい職業だとつくづく思った。
歌を作るということは、自分の思いを削って誰かの居場所として提供することなのかもしれない。
よっしゃ了解。ならばリスペクトを込めて、読もうじゃないか、あの本を!!
2019.09.05(木)
文・撮影=田中 稲
画像=文藝春秋