ジャニー喜多川ならではの
オリエンタリズム
――近田さんは《歌い手、と言わず歌わされ手、と彼等の事は呼ぶべきだ》と書いていますもんね(笑)。
近田 そう。何でもかんでも主体性があって「俺はこうなんだ」と歌うだけがいいってことじゃないじゃん。やっぱり優れたプロデューサーがいて、その人に「あなたはこういうふうにしたほうがいいですよ」と言われて、それを素直に信じて仕事としてやっていく、その彼方にいい未来が待っているんだったら、それはそれでありだと思うんだよ。結局それはジャニーさんがすごかったんだよね。
矢野 ほとんどワンマン体制。ずっと「プロデューサー:ジャニー喜多川」とクレジットされていますし。
近田 芯が通っているもんね。絶対、最終的なOK出しは最後までしていたと思う。
矢野 僕もそう思います。
――矢野さんは本を書くためにジャニーさんのこともかなり調べられたでしょう。
矢野 はい。『ジャニ研!』(大谷能生、速水健朗との共著/2012年、原書房)という本でも強調したんですけど、ジャニーさんのアイデンティティはアメリカにあるんじゃないかと。
近田 僕もそうだと思うよ。
矢野 ジャニーズの表現のユニークさって、日系人としてアメリカで生まれ育ったジャニーさんが、アメリカのショービジネスを日本に輸出する意識でやっていることに由来しているんじゃないかなと。
例えばシブがき隊の「アッパレ!フジヤマ」(1984年)とか「スシ食いねェ!」(1986年)みたいなジャパニズムというか、ちょっと誤解を含んだオリエンタルな日本像みたいなものも、そう考えると納得がいくんです。
近田 その文化はいまだにあるもんね。
矢野 嵐も最近『Japonism』(2015年)というアルバムを出していましたし。
近田 タッキー(滝沢秀明)がプロデュースしているのも。
矢野 「JAPONICA STYLE」。SixTONESと書いてストーンズの曲ですね。
近田 ジャニーさんの言語感覚は本当にすごいよ。普通そんな名前考えつかないよ、っていうグループ名ばっかり。
矢野 東京B少年がSexy美少年になって、さらに美 少年になったり。
近田 シブがき隊だって嵐だって、そうとうすごい名前だよね(笑)。
『考えるヒット テーマはジャニーズ』
著・近田春夫
本体1,600円+税 スモール出版
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近田春夫×矢野利裕
ジャニーズとは何か
2019.07.24(水)
構成=高岡洋詞
撮影=山元茂樹
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