ジャニー喜多川ならではの
オリエンタリズム

矢野氏は1983年生まれ。同年生まれのジャニーズのタレントには、二宮和也、松本潤(以上嵐)、上田竜也、中丸雄一(以上KAT-TUN)、丸山隆平(関ジャニ∞)、風間俊介などがいる。

――近田さんは《歌い手、と言わず歌わされ手、と彼等の事は呼ぶべきだ》と書いていますもんね(笑)。

近田 そう。何でもかんでも主体性があって「俺はこうなんだ」と歌うだけがいいってことじゃないじゃん。やっぱり優れたプロデューサーがいて、その人に「あなたはこういうふうにしたほうがいいですよ」と言われて、それを素直に信じて仕事としてやっていく、その彼方にいい未来が待っているんだったら、それはそれでありだと思うんだよ。結局それはジャニーさんがすごかったんだよね。

矢野 ほとんどワンマン体制。ずっと「プロデューサー:ジャニー喜多川」とクレジットされていますし。

近田 芯が通っているもんね。絶対、最終的なOK出しは最後までしていたと思う。

矢野 僕もそう思います。

――矢野さんは本を書くためにジャニーさんのこともかなり調べられたでしょう。

矢野 はい。『ジャニ研!』(大谷能生、速水健朗との共著/2012年、原書房)という本でも強調したんですけど、ジャニーさんのアイデンティティはアメリカにあるんじゃないかと。

近田 僕もそうだと思うよ。

矢野 ジャニーズの表現のユニークさって、日系人としてアメリカで生まれ育ったジャニーさんが、アメリカのショービジネスを日本に輸出する意識でやっていることに由来しているんじゃないかなと。

 例えばシブがき隊の「アッパレ!フジヤマ」(1984年)とか「スシ食いねェ!」(1986年)みたいなジャパニズムというか、ちょっと誤解を含んだオリエンタルな日本像みたいなものも、そう考えると納得がいくんです。

近田 その文化はいまだにあるもんね。

矢野 嵐も最近『Japonism』(2015年)というアルバムを出していましたし。

近田 タッキー(滝沢秀明)がプロデュースしているのも。

矢野 「JAPONICA STYLE」。SixTONESと書いてストーンズの曲ですね。

近田 ジャニーさんの言語感覚は本当にすごいよ。普通そんな名前考えつかないよ、っていうグループ名ばっかり。

矢野 東京B少年がSexy美少年になって、さらに美 少年になったり。

近田 シブがき隊だって嵐だって、そうとうすごい名前だよね(笑)。

» talk04に続く

『考えるヒット テーマはジャニーズ』

著・近田春夫
本体1,600円+税 スモール出版
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近田春夫(ちかだ はるお)

1951年東京都生まれ。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。80年代以降はビブラトーンズなどを率いてバンド活動を続ける傍ら、タレント、ラジオDJ、作詞・作曲家、CM音楽作家など多彩に活躍する。86年にはプレジデントBPMを名乗って日本語ラップの先駆者となり、87年には人力ヒップホップバンドのビブラストーンを結成。96年からは週刊文春で「考えるヒット」を連載。現在は、元ハルヲフォンのメンバー3人による新バンド「活躍中」として活躍中。2018年10月には、ソロアルバム『超冗談だから』をリリース。12月には、OMBとのユニット、LUNASUNのアルバム『Organ Heaven』が発売された。

矢野利裕(やの としひろ)

1983年東京都生まれ。批評家、ライター、DJ。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年、「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と二十一世紀』(おうふう)、単著に『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」』(垣内出版)、『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』(Pヴァイン)がある。