「自意識のなさ」に惹かれて
――お二人の著書を読んで大きく共通するなと感じたのが、今、矢野さんが言った「ダンスミュージック」という視点なんですが、矢野さんから近田さんに訊いてみたいことって何かありますか?
矢野 本の中で、彼らの歌の自意識のなさを繰り返し指摘されていますよね。ジャニーズの芸能はやっぱりショーアップされたものだと思うんですけれども、「見世物」であるということは音楽性にも関係していると思いますか?
近田 どうなんだろうね。その答えになっているかどうかわからないけど、僕の場合、ジャニーズはロックやフォークみたいなものに対するカウンターっていう見方をずっとしてきたんですよ。
時代が変わって、今はアルバムに自分の作った曲を入れる人もいたりするけど、基本的にはお仕着せというか、作家が作った曲を歌っているわけじゃない。
例えばGSの人たちはさ、作家が作ったものを演奏しながらも、どこかに不満や反発を秘めていたのに対して、そういう自身のポジションに対する批評性みたいなものが、ジャニーズの人たちにはないんだよね。
あくまで与えられたものを表現する、ということに対して迷いがない感じ。そこが僕はある時期からすごく面白くなって。そうじゃないとできない表現ってあるじゃないですか。
矢野 すごくわかります。
近田 それを最初に強く思ったのは、ジャニーズ時代の郷ひろみだよね。純粋に音楽的なことで言うと、郷ひろみと筒美京平の関係がなかったら、そこまでその後のジャニーズに対する興味は湧かなかったかもしれないな。
あともうひとつ、当時の郷ひろみの曲って女性作詞家が多いんだよ。岩谷時子とか安井かずみとか有馬三恵子とか。女の人が詞を書くんだけど、やたらとひどい男の話ばっかり(笑)。
それを郷ひろみがまったく自意識なしに、何も考えずに歌っている感じっていうの? そこからジャニーズの音楽は面白いなと思うようになったんだよね。
それまではダンスのフォーメーションとか、ステージの面白さを見ていたんだけど、作家と表現者の関係みたいなものの面白さがジャニーズの音楽にはすごくあるなということに、あのころ気づいた気がする。
当時は言語化できていなかったけど、今考えるとそういうことだったんじゃないかな。
『考えるヒット テーマはジャニーズ』
著・近田春夫
本体1,600円+税 スモール出版
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近田春夫×矢野利裕
ジャニーズとは何か
2019.07.06(土)
構成=高岡洋詞
撮影=山元茂樹
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