ジャニーズにとって
歌は仮歌みたいなもの?
――世代がまったく違うお二人が惹かれたひとつの伝統を、今日は深掘りしていきたいと思っています。近田さんの『考えるヒット テーマはジャニーズ』にはジャニーズの音楽の伝統、カラーといった言及が何度もありますが、そうした見方をするようになったのはいつごろですか?
近田 いつだろうね。今はどうか知らないけど、70年代のジャニーズって、同じ外国の曲とかを何代にもわたってカヴァーしていたんだよ。代替わりをしても歌い続けて、その感じがずっと共通していた。
あと、みんな声質が似ているんだよね。
それともうひとつ、これは何かに書いたかもしれないけど、初代ジャニーズは置いといて、フォーリーブス以降のグループは、メンバーの顔が必ず北公次、おりも政夫、青山孝、江木俊夫の4人の誰かの系統にはまるのよ。ジャニーさんの好みなんじゃないかと思うんだけど。
あと、あの事務所は、青山孝はちょっと違ったけど、やっぱりみんな踊りじゃん。で、歌は仮歌みたいな感じなんだよ(笑)。ロックの人みたく変に英語っぽく歌ったりしなくて、学校でみんなで斉唱するときの歌い方。あんまりハモらないしね。
不自然な歌い方で当たったのは木村拓哉だけじゃない? 俺の推測ではブラザー・コーンの影響だと思うんだけど。
矢野 (笑)。
近田 みんな素直に、飾らないで歌うから、歌詞が聞き取りやすいのよ。あのまっすぐに歌う感じは、ある世代以降のジャニーズのアーティストにずっと共通している。
今も基本的にはそうだよね。ハモっていてもハモっているようには聞こえない、みたいな感じ。よく中居(正広)くんの歌をヘタだっていうけど、ジャニーズはみんなあれだよ。そこらへんにずっとある共通性を感じてきたのかもしれません。
――矢野さんはどうですか?
矢野 僕の場合は先にブラックミュージックっていう枠組みがあって、そこから逆算していったときに、歌謡曲の中では妙にジャニーズが引っかかってくる、みたいな印象が最初なんです。
郷ひろみや田原俊彦ならディスコだし、フォーリーブスは初期は衣装も曲調もGS的だったりしますけど、70年代になる頃にはフィンガー5っぽくなっていたりとか。
近田さんが今「踊りじゃん」とおっしゃいましたけど、ダンスミュージックという意識がある。それをずっと続けていたのがジャニーズっぽさなのかなと。
そうすると歌はもうちょいひねってもよさそうなのに、あくまでまっすぐ健康的に歌っているという、そのちぐはぐさが面白いなと思います。
近田 健康的だよね。あれがいいんだよ。
矢野 ソウルだしディスコなのに、すごくさわやかですよね。
近田 小学生みたいな歌い方でさ。
矢野 あとラテンっぽいノリも、昔は歌謡曲にいっぱいあったと思うんですけど、最近はなくなってきましたよね。
でもジャニーズは定期的に出してくる。南半球への目配りがすごく大事だな、いいなと思ってます。
2019.07.06(土)
構成=高岡洋詞
撮影=山元茂樹