「大変な自分」に
酔っている人たち

 がんばったアピールをする人は、自分に酔っている人です。

 「がんばる」とは、麻薬のようなものです。

 人は無気力に生きていると、精神的に病んでしまいます。逆に、なにかしら動き回っていると、それだけで気が紛れる。

 もちろん、結果的に人の役に立つこともあるでしょう。ですが、基本的に、この人たちは、自分のためにがんばっているのです。

 独りよがりで、自己満足でがんばっている。それが透けて見えるからこそ、こっちとしてはムカつくわけです。

 なにしろ、小さいころから「がんばることはすばらしい」と教わってきているので、がんばったあとのことには無関心。「結果が出ないのは運が悪いだけ」と、信じています。ですからこういう人の耳には、「がんばる」以外の言葉は響きません。

「もっと結果を出してほしい」

「もっとほめてよ。だってがんばってるんだよ!?」

「そのやり方は間違ってる、こういう風にやってほしい」

「日ごろのがんばりを見てないでしょう?」

 と、話は永遠にかみあいません。お互いのストレスは無限に続きます。

 では、いったい、どのように言い返せば、心を入れ替えて、もっと上手にやってくれるのでしょうか?

「もっとがんばれ」で
もっとがんばらせる

 がんばったアピールをする人に効く言葉、それは「もっとがんばれ」です。

「今日、外回り、すごくがんばったんですよ」

「わかった。もうちょっとがんばろうか」

「忙しいけど、君のために、がんばって時間取ったんだ」

「うん。でも、もっとがんばろう。そうすれば遅刻しないよね」

「家事も子育ても、がんばって手伝ってるじゃないか」

「もっとできる。もっとがんばろう」

 この人たちはとにかく「がんばる」のが好き。「考える」のは嫌い。「人から言われた通りにやる」のも嫌い。

 であればしかたありません。やみくもに、もっとがんばってもらいましょう。

 ほめなくていいんです。ハッパをかければいい。

 そうすれば「がんばってる」アピールをしてる身としては、もっとがんばらざるを得ないというわけです。

 ですが「がんばりが足りない」というネガティブな言い方はぐっとこらえましょう。「こうしろ、ああしろ」という指示もNG。もっとシンプルに、「わかった。もっとがんばれ」でOKです。

 余裕があるときは、「もっとできるはずなのにもったいない」などといった言葉を添えてあげると、よりいいでしょう。

 「がんばった」アピールしてくる人には、「もっとがんばれ」とけしかけるのが、最もストレスなく結果を出す方法です!

【今回のポイント】
がんばったアピールをする人は……

◆実は単に「がんばってる自分」に酔ってるだけ。

◆NGアクション:「結果を出せ」「上手くやれ」と言うとむくれる。

◆OKアクション:ハッパをかけて、もっとがんばらせる。

『「言い返す」技術』

突然キレる人、パワハラする人、セクハラする人、悪口ばかり言う人……。事を荒立てずにそんなムカつく相手をスパッと黙らせるには? 具体的な事例を交え、目からウロコの完ぺきな「言い返し方」をお教えします。話題の心理カウンセラーによる“今日から使える”超かんたん会話術! これであなたはノンストレス!

著・五百田達成
1,400円+税
徳間書店
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

五百田達成(いおた・たつなり)

心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」など。
Twitter @ebisucareer