「ファン目線」でも「暴露」でもない視点が新鮮

 K-POPへの熱中をきっかけに、たびたび韓国へ旅行するようになったという女性は少なくないだろう。

 そんなK-POPファンにおすすめしたい新書が登場した。君塚太著『日韓音楽ビジネス比較論 K-POPとJ-POP 本当の違い』。同書は、今年5月の刊行以来、音楽関係者を中心として、静かな話題を呼んでいる。

君塚太氏は、1965年生まれの書籍編集者/ライター。著書に『原宿セントラルアパートを歩く』(河出書房新社)、編書に『日本ロック写真史 ANGLE OF ROCK』(ぴあ)がある

 この論考を支えているのは、「ファン目線」でもなければ「暴露」でもない、冷静にして独自の著者の視点。そのスタンスから解き明かされる、両国の音楽ビジネスの構造と歴史、アーティストおよびリスナーの体質の違いには目からウロコが落ちる。

 第1章 は「『つくる力』か、『こなす力』か」。作詞作曲をも手がけるシンガーソングライターの方が単なる歌手よりも上に見られがちな日本に対し、韓国は、純粋にパフォーマーとしての圧倒的な力量のみを評価する傾向が強いという指摘は興味深い。

 第2章「受け入れる国か、進出する国か」では、内需と外需の比較を軸に、日韓の音楽マーケットの現状について俯瞰する。日本では、著作権料や印税、コンサート出演料が歌手の主たる収入源となっているが、実は韓国の歌手にとってこれらの収入基盤は脆弱。その代わり、放送番組、そして、放送局や企業が主催する入場無料の広報イベントの出演料への依存度が高いのだという。

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2012.09.14(金)