口パクを嫌い、高音が出せる歌手を評価する韓国人

著者が個人的に高く評価する4人組バンド、CNBLUE。「ジェイソン・ムラーズやマルーン5からの影響を韓国でもヒットを狙える楽曲に消化している」点が立派なのだという

 第3章「『共存』するのか、『競争』するのか」では、競争社会としてのK-POP業界について触れる。常に激しいサバイバルが繰り広げられるこの世界では、長年にわたって歌手を続けるのは至難の業。ゆえに年長の歌手は数少ない。「細く長く音楽活動を続けていくなら、知名度を活かして起業した方がいい」というメンタリティも、この趨勢に影響を与えているらしい。ここでは、高い音階を歌える歌手に対する高い評価、リップシンク(口パク)のタブー視など、かの国のリスナーならではの価値観を知ることもできる。

 第4章「『革命』があったのか、なかったのか」、続く第5章「ロックは『主流』か『非主流』か」では、韓国におけるロックやフォーク――つまり自作自演を基本とした音楽ジャンル――の歴史を振り返る。徴兵制度が、ロックバンドを継続する際の大きな障害になっているというあるミュージシャンの発言には膝を打つ。

 そして、ダンスミュージックの隆盛と国民性の関係を探る終章「踊るのか、踊らないのか」で本書は幕を閉じる。

 この一冊を携えて韓国を旅したならば、今までとはガラリと変わった角度から、K-POPが聴こえてくるはず。

君塚太『日韓音楽ビジネス比較論 K-POPとJ-POP本当の違い』
発行 アスペクト
定価 ¥1000
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2012.09.14(金)