その人の存在を際立たせることに
心を砕く化粧品
今日初めて会った人、あるいは今日どこかで見かけた人……それだけなのに、夜になってもう一度存在を振り返ってみたり、何日も経ってからまた存在がちらついたり、何だか記憶に残る女性っているもの。絶世の美女だから記憶に残るわけじゃなく、記憶に残るのは、美しさ以上に“気配の魅力”というものを持っている人。
過激なヌードを数多く撮ってきた写真家、加納典明が「女の魅力は気配に宿る」と語ったのを忘れられない。女は体ではなくて気配なんだ! 見た目ではなく気配なのだ! そういう美の本質を教えてもらった気がしたから。
かくして最近は、見た目を美しくすることが、以前ほど難しくなくなったからなのか、雰囲気を美しく磨くことが新しいテーマとしてクローズアップされるようにもなっている。目に見えないようで見えている雰囲気を磨くのは本当に難しいが、でもこれも女性の進化であり、美容の進化なのだろう。
そうこうするうちに、化粧品にもそうした雰囲気の美しさまで表現しようとするブランドが現れた。素晴らしいことだと思う。でもそんなものが表現できるの? いや困難に挑むからこそ素晴らしいのだ。
例えば、“記憶に映る美しさ”をコンセプトに作られたのが「トーン」という名のブランド。まさに“人の記憶にいつまでも残る女性美”を生み出そうとする化粧品だ。「to/one」と書いて、トーン。目に見えるものだけでなく、そこはかとなく感じられる気配美や心の美しさまでを一人一人に提供したい気持ちの表れだろう。
例えば口紅もアイシャドウも多くの色を揃えているのに、誰もがどの色も使える、それはメイク自体が必要以上に主張せず、しゃしゃり出ず、人の存在感だけをちゃんと際立たせてくれるから。だから、人の記憶に残っていくのだ。
何より重要なのは、スキンケアからベースメイク、カラーまで見事に充実したラインナップが、基本オーガニック素材だけで作られたこと。そういう制限なしに作られた色とも、全く遜色ない。微妙な色合いを求められるコンシーラーや、繊細に輝くオーラを作るルミナイザー、まつげ美容液までを自在に作ってしまうなど、気配美を作るようなデリケートな仕事をナチュラル成分だけで叶えるという、困難に挑戦する姿勢、それ自体が素晴らしい。
2018.04.28(土)
文=齋藤 薫
撮影=釜谷洋史