アメリカ合衆国西部に位置するコロラド州は、数多くの温泉を有するエリア。そこには、日本の温泉情緒とは趣を異にするユニークなカルチャーが花開いています。雄大なアメリカンロッキーに抱かれた“いで湯の里USA”を、温泉エッセイストの山崎まゆみさんが旅しました。

vol.01 グレンウッドスプリングス

世界最大の温泉プールがここに!

創業から130年を数える老舗リゾートホテルに、世界最大の温泉プールがある。

 コロラド州には、北米大陸を南北に5000キロにわたり貫くロッキー山脈の一部、通称“アメリカンロッキー”が鎮座する。州内で最も高い山は標高4401メートルのエルバート山で、4000メートル以上の山は全部で53峰もある。

 コロラド州の玄関口、デンバー国際空港に到着。約2時間半かけて、全米でも知られる温泉保養地・グレンウッドスプリングスに向かう。コロラド州にはホットスプリングスという都市もあり、スプリングスと名の付く地名がとても多い。

 「スプリングスという名前が付くのは、入浴だけでなく、飲泉も含めて、なにかしら温泉に関わりがある場所です」と教えてくれたのは、今回、“コロラドで温泉三昧”の旅を案内してくれるコロラド州政府観光局のUさんだ。Uさんが四駆を運転し、552マイル(約888キロ)ものコロラド大移動の旅が始まった。

グレンウッドスプリングスへの入口は、グランドキャニオンへと続く絶景渓谷。

 グランドキャニオンへと続く壮大な渓谷を縫うように四駆が走る。この剥きだしの巨岩がグレンウッドのゲートとも言える。

この赤土、コロラドらしい風景だ。

 この道を行くと、そこには、それまでの野性味溢れる雰囲気とは相反する、夢のような場所が待っていた。温泉プールとホテルが整った「グレンウッド・ホットスプリングス・リゾート」だ。

「グレンウッド・ホットスプリングス・リゾート」から繁華街への道すがら、巨大温泉プール全体を見渡すことができる。

 アメリカの温泉入浴は日本のそれとは異なる。日本人の感覚から言えばプールに近い。基本的には水着着用で、子供は浮輪を付けて遊んでいる。ただ、プールには誰もが入ることができる一般ゾーン以外に、大人たちが寛げるよう、子供出入り禁止のゾーンが設けられている。

朝食前の静けさに覆われたプール。
夕暮れ時のセラピー用プール。

 レジャー用の大プールは長さ123メートル、幅30メートル。ここにはウォータースライダーもあり、ジャンプ台もある。セラピー用プールは長さ30メートル、幅12メートル。このふたつのプールの間に仕切りがあり、ひとつの菱形プールを形成している。これが世界最大の温泉プールだ。ここに毎分9200リットルの温泉が注がれている。

 温泉の温度はといえば、一般プールは32度と少しぬる目。大人用は40度に設定されていた。

プールサイドにある簡易個室休憩所。別料金を払えばタオル4枚が使用でき、水のボトル4本をいただける。なお、プールサイドでのアルコールはNG。

 プールから眺める山々や人の多さに圧倒されっぱなしだった。その空気に酔いしれていると、何時間でも過ごせる。しっとりとした日本の温泉情緒では決して味わえない、アメリカの温泉らしいワイルドさがある。入浴中の湯の肌触りとか、入浴後の肌の仕上がりを感じる余裕が吹っ飛んでしまうほど、そのスケールの大きさにのみこまれた。

温泉プールとは道を挟んだところに、ホテル客室棟がある。
ワインレッドを基調とした落ち着いた客室。窓からは温泉プールを見渡すことができる。

 今年で創業130年の歴史を誇る「グレンウッド・ホットスプリングス・リゾート」は、温泉プール以外に宿泊施設やスパも整っている。

一番古い建物であるスパ棟のショップでは、ボディートリートメント類も販売。手前の銀のボールは入浴剤。スパでは10分程のはちみつパックを行うハニートリートメントが人気。
古くは飲泉としても親しまれてきたグレンウッド。現在もここで飲泉ができる。

Glenwood Hot Springs Resort
(グレンウッド・ホットスプリングス・リゾート)

所在地 415 E. 6th St., Glenwood Springs, CO 81601
電話番号 970-947-2955(プール)
http://www.hotspringspool.com/

2018.01.06(土)
文・撮影=山崎まゆみ