知る人ぞ知る美食の国、マレーシア。この連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。

マレーシアの華人系民族にとって
大事な贈りもの

 “ムーンケーキ”というロマンチックな英語名を見て、なにを想像しますか。

趣向を凝らしたデザインに見惚れる。花形のものは、ピンクは生クリーム、紫はブルーベリー、白はジャム入りのモダンタイプ。(写真提供:KENNYasia)

 答えは月餅です。一年でいちばん月が美しいとされる中秋節。マレーシアの町にはムーンケーキがあふれています。ショッピングモールには特設会場、中国レストランでは店特製の限定品を販売、チェーン展開するあのカフェにも、ロゴ入りのムーンケーキが登場!

 この盛り上がりっぷりは、日本のバレンタインデーのチョコレート商戦に匹敵するにぎやかさです。

毎年デザインや味を変えて売り出すスターバックスのムーンケーキ。この年は、抹茶味(左)とチョコレート味に満月を模した白餡入り。

 もともと中国、周の時代にはじまった中秋節は、20世紀初頭に移民によって東南アジア全体に広がりました。マレーシアでも、人口の約25%を占める華人系マレーシア人にとっての大事な行事。この時期、お世話になっている人や親せきにムーンケーキを贈る風習があります。

 どっしりと重厚感があり、見事な型押しのデザインが目をひくムーンケーキ。食べたことのある方も多いと思いますが、マレーシアのそれは、私たちの想像するムーンケーキの概念を超えています。この時期だけ登場するムーンケーキは、おいしいのはもちろん、楽しさも満点なのです!

2017.10.18(水)
文・撮影=古川 音(マレーシアごはんの会)