テクノロジーとの掛け合わせで
音楽シーンを活性化
山口 レコード会社を軸に、一組の新人アーティストだけをピックアップしてスターに押し上げるというやり方は以前より難易度が高くなっている気がします。シーンをつくっていけるかが必要です。
僕が浅田祐介と一緒に昨年から始めたTECHSは、ライブイベントとウェブメディアの両輪でやっています。常連組の小南千明は今年メジャーデビューしますし、SpininGReenも新機軸を打ち出すようです。
テクノロジーとの掛け合わせというテーマで新しい才能が出てくると、音楽シーンとして活性化します。TECHSの場合は、プログラマーと映像クリエイターを同じ目線で巻き込めているのが強みだと思っています。また、グローバル視点で見ても、日本人が圧倒的な歌唱力で勝負するのは正直厳しい。歌ではインドネシア人の方が上ですし、ダンスでも韓国人が先行している。でもテクノロジーと組み合わせるような高次元なジャンルは日本人のクリエイティビティの高さが活きるはずなんです。YMOという先例もありますね。100メートル走で金メダルは難しくても、細かな野球でWBCで勝つみたいな喩えはわかりにくいですか?(笑)
伊藤 なるほど。TECHSというのはライブイベントだと思っていましたが、エンターテイメント×テクノロジーの企画であり、そこでパフォーマンスするアーティスト集団はテクノロジーという軸を持っている。そしてプロデューサーには山口さんと浅田さんがいるということなんですね。ジャニーズやAKBとは少し違いますが、もっと枠を飛び出した面白い企画だと思います。
これからが本当の意味での
プロデューサーの時代?
伊藤 ところでジャニーズって昔は世代交代をしていましたよね。シブがき隊から少年隊、少年隊から光GENJIみたいに。それを考えると決して最初からプラットフォーム型をイメージしていたとは思いませんが、AKBは最初から意識していたように思います。LDHは途中からそれに気づいたんじゃないかな。これからの日本における音楽ビジネスは最初からプラットフォーム型をイメージして戦略を作ることが大切だと思うんです。もちろん、軸になるブランディングと圧倒的なプロデューサーが必要ですね。
山口 そうですね、これからが本当の意味でプロデューサーの時代になるのかもしれません。
伊藤 まだはっきり姿はみえませんが、プラットフォーム型をイメージして戦略を練っているチームは現在でも幾つかあると思います。そして、その中の一つが次の時代を作っていくんじゃないかな。個人的には女性ソロアーティスト・女性シンガーソングライターのプラットフォーム型グループが出てくると思っていて、この伊藤涼がプロデュースをしたいと思っていますよ(笑)。
山口 おっ! スタープロデューサー宣言が出ましたね(笑)。
伊藤 はい、それなりに経験も積んだしイメージもできていますよ。あとはどういう形で始めるかですね。
山口 これから成功するプロデューサーは、クリエイティブもプラットフォーム形成もマネタイズの仕方も、総合的にできないといけない時代だと思います。僕は音楽業界の活性化には新しい人材が必要だと思って、2年半前からニューミドルマン・ラボを始めました。音楽家とユーザーの間(ミドルマン)の刷新、再定義が必要という考えから生まれたのが、ニューミドルマンの定義です。4月1日にスペシャルイベントをやるので来てください。『ヒットの崩壊』著者の柴那典、宇多田ヒカルの宣伝プロデューサーの梶望、「All Digital Music」編集長のジェイ・コウガミと、大注目の人たちと一緒に音楽の未来について座談会をします。エイプリルフールなので、多少、乱暴なことを言っても許されるかなと(笑)。
伊藤 いいですね。楽しみです。
山口 5月からは、ニューミドルマン養成講座の第6期が始まります。この3人もゲスト講師ですし、DJの沖野修也さんや、アソビシステム社長の中川悠介さんもゲスト講師をお願いしています。GW明けから暫くの間、毎週木曜日の夜に高田馬場に通うことになりますよ(笑)。
伊藤 空けておきます。木曜日は高田馬場で(笑)。
2017.03.31(金)
文=山口哲一、伊藤涼