エッセンシャルオイルって
本当に効くんだと思い知る日
大変に言いにくいが、今改めて振り返ってみると、自分はこれまでアロマテラピーというものを本気で信じてはいなかったのかもしれない。
頭ではわかっている。理屈ではよくわかっている。でも何となくふわふわした曖昧なものでしかなかった。そうね、アロマテラピーは人を幸せにしてくれるよね……というレベルの。それは、自然の力を侮っていたということ。
そもそもなぜ自然界には、無限の植物が存在するのか? なぜ、すべての植物が名前を持ち、一つひとつ異なる主張をするのか? それは、自分の役割をそれぞれに果たしているからなのだと思う。命あるもの全てが、地球においてちゃんと役割を果たしている。それをアロマテラピーによって思い知らなければいけなかったのにと、今更ながら思うのだ。
というのも、これまで眠れないなどという経験はほとんどなかった自分が、眠れない夜を迎えることが多くなった。正直、眠ることがこんなに難しいとは知らなかった。ひとたびタイミングを逸すると、眠れない眠れない、どうしよう、と焦るばかりで、逆に頭が冴え冴えしてしまう。そうなるともうヤバい。暗闇が重くのし掛かってきて、いろんな不安やいろんな悩みが浮き上がり、なにも今思い出さなくてもいいことをわざわざ悩んでしまうのだ。
横たわっているのにどんどんストレスが溜まってくるのがわかる。「横になっているだけでも体は休めるから、眠れなくても大丈夫」というのは気休め。いわゆる入眠剤も、確かに効くはずだが、これがないと眠れないということ自体がプレッシャーになり、またストレスが溜まるという悪循環。
そうか、眠れないとはこういうことなんだと初めて知った。眠れないことの苦しみをようやく理解した。そして、これは生きていく上で一番無駄な、一番間違った時間ではないかと改めて思い知ったのだ。
そこで生まれて初めて、入眠のためにエッセンシャルオイルを使ってみる。そして、あまりの効果にちょっとした感動を覚えたほど。
スペシャリストに提案してもらったのがオレンジだったのだが、これはアルツハイマーにも効くと言われるもの、数十秒でベッドの奥深くに沈みこんでいくような、気が遠くなるような感覚に襲われ、そのまま記憶がなくなった。そして翌朝はいつもより早く目が覚めた。 もちろん入眠効果で有名なラベンダーも同様の効き目をもたらすが、オレンジの沈みこんでいく感じは格別心地よい。
2017.01.01(日)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫