民家から世界遺産まで、そこかしこにポルトガル風情が

マカオを散策していると、カラフルな建物が次々と目に飛び込んでくる。

 ペパーミントグリーン、レモンイエロー、サーモンピンク。いたるところにポルトガル風の鮮やかな建物が並ぶマカオを一言で言い表すなら、「カラフルな街」。半島部の中心地をちょっと散策するだけでも、あちらこちらで写真を撮りたくなるようなシーンに出会う。

一見すると博物館のような建物は、現役の政府機関である特別行政区政府。

 そんな美しい風景を造りだしているのは、400年以上に亘るこの街の歴史だ。中国の田舎町だったこの地に、東アジアでの交易拠点を求めてポルトガル人がやってきたのは16世紀中頃。

 以来、彼らはこの地に祖国とよく似た街を築き、19世紀後半には、マカオを正式な植民地とした。1999年、中国に返還されてからは一大開発が進んだものの、ポルトガル風情は失われることなく今も息づいている。

海と坂道と路地。ポルトガルのリスボンによく似たマカオで、ポルトガル人は街を築いていった。

 半日あれば歩いて一周できてしまう半島部には、ポルトガル統治時代に建てられた世界遺産の建物が点在。アズレージョ(ポルトガルの装飾タイル)の道しるべに導かれながら、ステンドグラスが美しい教会や瀟洒な劇場を訪ねれば、いつしか南欧に迷い込んだ気分になるはず。

創設を約300年前に遡る世界遺産の「聖ヨセフ修道院および聖堂」。クリームイエローの壁が青空によく映える。
ターコイズブルーの天井が美しい「聖ローレンス教会」(左)と、東洋初のオペラハウス「ドン・ペドロ5世劇場」(右)。どちらも、中心地から歩いて数分のところにある。

 こうした世界遺産に登録されている建物のすべてが現役であるのも、マカオならでは。「大堂」や「聖オーガスティン教会」、「聖ドミニコ教会」などで行われる広東語のミサはローカルのクリスチャンで賑わい、18世紀に建てられた「民政総署」や「仁慈堂」は、今も政府機関として市民に利用されている。

 マカオの世界遺産はたんなる写真撮影スポットではなく、人々の暮らしのなかにしっくりと溶け込んでいるのだ。

「聖アントニオ教会」はマカオで最も古い教会のひとつ。かつてポルトガルの人々が結婚式を挙げ、花がいつも飾られていたことから、中国語で「花王堂」とも呼ばれていた。

2016.12.07(水)
文・撮影=芹澤和美