中国風情たっぷりのパワースポット
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小さな街の中に、ポルトガルと中国の文化、新しいカルチャーと伝統がぎゅっと凝縮されているマカオ。他の都市にはないポルトガル風情にばかり目が行きがちだけれど、この街を旅するなら、中国のしっとりとした情緒もあますところなく味わっておきたい。
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「媽閣廟(マコウミュウ)」は世界遺産に登録されているマカオ最古の中国寺院。真っ赤な柱や天井を埋め尽くすうずまき型線香がどっぷり中国、といった雰囲気のここは、マカオという街名の由来になったという説がある。
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時は400年以上前。船に乗ったポルトガル人がこの寺の前にかつてあった岸辺(現在は埋め立てられて広場となっている)に到着した。彼らが陸を指差し、「ここはどこか?」とジェスチャーで地元の漁師に尋ねると、媽閣廟の通称である「阿媽閣(アマガオ)」という答えが返ってきた。それがポルトガル人には「マカオ」と聞こえ、地名となったのだそう。
そんな歴史エピソードもあるここは、ご利益が多いと慕われるパワースポットでもある。
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右:中心地のセナド広場近くにある「盧家屋敷」は、実業家、盧華詔が1889年に建てた邸宅。彼が銀行業などで財を築けたのは風水のおかげかも?
「鄭家屋敷」と「盧家屋敷」は中国に古くからある風水思想を取り入れた邸宅。いずれも世界遺産に登録されている。
どちらの屋敷にも中庭があるのは、採光と風通しをよくするだけでなく、雨を貨幣に例えた風水の考えに倣い、家の中に雨を降らせるため。中国の伝統的な建築様式に西洋のエッセンスを取り入れた、当時の最先端をゆくインテリアは必見。意匠を凝らした内装といい、外の喧騒を忘れさせる静けさといい、別世界に迷い込んだかのよう。
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観光客で賑わう「聖ポール天主堂跡」の裏にひっそりと立つのは、「ナーチャ廟」。ここは、規模も由来もほっこりする中国寺院だ。ナーチャというのは、「西遊記」にも登場する武芸の達人。マカオで疫病が大流行した19世紀後半、ナーチャのお告げで疫病が鎮まったことから、街の人たちが感謝の意味を込めて、ここに廟を建てたのだそう。
村の鎮守様的存在のお寺の傍らにあるのは、17世紀初期にポルトガル人が築いた要塞と、天主堂のファザード。ここは、東西文化のミックスが垣間見られる、マカオらしい場所でもあるのだ。
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右:吹き抜けになっている館内は図書館として使われている。
世界遺産ではないけれど、中国的情緒を感じられる庶民派建物が、「八角亭」。その名のとおり八角形の小さな建物は、1927年にビリヤード場兼レストランとして建てられたもの。現在はミニ図書館として利用され、朝は新聞を読むおじさんたちで賑わっている。
2016.11.22(火)
文・撮影=芹澤和美