コーセーのミューズに絶対共通するのは
男目線と不思議な女受け
今年で創立70周年を迎えるコーセーが、ミューズを一堂に集めた企業CMを流し、話題となった。もともと化粧品メーカーが選ぶ顔には、企業のカラーと呼応する、なんとなくの傾向があるものだが、コーセーが選ぶ人たちにはある明快な共通点が潜んでいる気がしてはっとさせられた。
いや、それは今に始まった話じゃなく、コーセーミューズには昔から確固たる基準を感じていた。そこに潜んでいるのは、極めて説得力ある美人像。「女はこれでなきゃ」という美人の理想のようなものを見せてくれるのだ。
ちなみに、資生堂はモード感や時代を優先させ、カネボウは共感や親近感を優先する傾向があるが、コーセーに顕著なのは、男性目線。CMのキャラクターは、誰による誰のための人選なのかが、視聴者にも結構見えてしまうもの。社長の好みに違いないとか、広告代理店推しに違いないとか……。でも、ここはAKB好きのオタクじゃなく、どちらかと言えば韓国の「少女時代」好きの、背広を着たコンサバ男の目線。
しかしそれだけじゃなく、いつも必ずクリアしているのが、女性の反感を買わないことなのだ。実はこれ、結構難しく、男受けと女受けはやはりなかなか一致を見ない。でもこれがパッカリ二分されるわけじゃなく、中にはちゃんと、男受けと女受けを両方クリアする人もいて、そういうタイプを見事に選び抜く男目線はここ一流のもの。
美しいのに、リアルな共感ができる美女軍団
そこで思い出したのが、今や世界的な注目を浴びる“ヴィクトリアズ シークレット”の美女軍団。いわゆるスーパーモデルの中でも、男受けと女受けを両立させている稀有なモデルを見事に選び抜いている。男の目にはセクシーに映り、女の目にはキュートに見える。だから男も女もかぶり付くという構図。
さらに加えてコーセーの美女軍団は女にとって、ただ手の届かない憧れの対象じゃない。偶然か必然か、自分たちと同じように、ちゃんと人生に喜怒哀楽していることがはっきりわかる、リアルライフな美女たち。美しいのに、リアルな共感ができるタイプ。だから女受けもする、この鮮やかな美人論を私たちもここでしっかり学ばなければ。
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2016.07.04(月)
文=齋藤 薫