Vol.14_KOSE
変わらない、変える必要がなかったスペシャルな化粧水
今回の主人公は「雪肌精」。1985年に発売され、今年で30周年を迎えたコーセーの【超】ロングセラー化粧水である。薬瓶を思わせる深いブルーのボトル、漢字3文字の明解なネーミング、みずみずしい白濁のローション。CREA世代なら雪肌精で化粧水ケアの心地よさを知った人も少なくないはず。私は20代からの付き合いで今も定番の一本。これがないと落ち着かない常備薬みたいな存在だ。母娘2代の愛用者も多いし、男子のファンも増加中。その人気は世界へと広がっている。
「現在アジアやアメリカなど13の国と地域で展開しています。昨年末に累計4800万本を突破しました」とはコーセー 商品開発部の石井宏子さん。雪肌精の30年の歩みを知り尽くす一人、今回は石井さんと共に雪肌精の奥深い魅力に迫りたいと思う。
雪肌精がデビューした80年代半ばは自然派コスメの最初のブームが巻き起こった時代。東洋の植物成分や漢方の考え方に注目が集まり、肌にやさしいイメージを持つ人も多くてスキンケア界は一気にナチュラルモード。紫外線の肌への害が取り上げられるようになったのもこの頃だ。
「コーセーは和漢植物の研究に長年取り組んでいて、当時の研究チームにも漢方のスペシャリストがおりました。肌にやさしいだけでなく、肌効果のある“和漢発想”の化粧品を開発しようと。透明感のために、肌が長く付き合える化粧水を目指して誕生したのが雪肌精です。当初は活肌精(マッサージ美容液)、潤肌精(クリーム)という仲間がいてラインにプラスαできるスペシャルケアとしてご紹介していました」(石井さん)
漢字3文字仕事人トリオ! 効果や機能が一発でわかるネーミングもインパクトあったし、“和漢発想+高効能”の究めっぷりは半端じゃなかった。
「雪肌精に配合されている和漢植物エキスは古来中国に伝わる“四気”という概念のもと100種近い和漢植物から厳選しました。核となるのがハトムギ、トウキ、メロスリア。これらを漢方の調合の考え方である“君臣佐使(くんしんさし)”にならって組み合わせています。さらりとなじんでみずみずしくうるおう独特のテクスチャーは油分を微粒子化して水に均一に分散させる技術によるもの。雪肌精のフォーミュラはすべてのバランスがひとつに行き着いた“点”の処方。ちょっとでも手を加えるとテクスチャーや浸透感、後肌の感触が変わってしまうので変えられないのです」(石井さん)
2015.06.04(木)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛