©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 ついに、カウントダウンが始まったといっていいだろう。アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が、公開初日の2020年10月16日(金)から11月29日(日)までの45日間で、興行収入275億円を突破。『タイタニック』の262億円を上回り、歴代2位に躍り出た。

 トップに君臨する『千と千尋の神隠し』が持つ興収308億円超えも、射程圏内に入ってきた。11月28日(土)・29日(日)の2日間だけで興収10億円を稼ぐという衝撃的なペースで、このままいけば年内での記録更新もあり得る状況だ。

 さらに、12月4日(金)には吾峠呼世晴氏による原作漫画『鬼滅の刃』の最終巻となる23巻が発売された(平野稜二氏によるスピンオフマンガ『鬼滅の刃 外伝』も同時発売)。

 となれば、一層ブームが過熱することになるはずだ。新型コロナウイルスが人類史を変えてしまった2020年に、日本の映画史までもが新たな1ページを刻むとは……。さすがにこの状況を予想できた方は、いなかったのではないか。

 前回の記事では、『鬼滅の刃』のキャラクターの魅力を中心に考察したが、今回はこの『鬼滅の刃』ブームをもっと楽しめるような、「豆知識」を10個、どどんと……いやコソコソ噂話程度に紹介していく。

 なお、未アニメ化の部分にはなるべく触れないように選出したが、「最終巻発売記念」ということもあり、最後のひとつだけ今後の展開に若干言及している部分があることを、ご容赦いただきたい。

壱ノ型:もともとは海外にも「鬼」がいた?

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 じつは『鬼滅の刃』には長い歴史があり、前身となる『過狩り狩り』、プロトタイプとなる『鬼殺の流』を経て、3年以上をかけて現在の形に研磨されていった。原点といえる『過狩り狩り』を読むと、『鬼滅の刃』との相違点が多々確認でき、興味深い。

 その最たるものは、鬼の立ち位置の違いだ。『鬼滅の刃』では、平安時代に新薬の副作用で鬼と化した鬼舞辻無惨を祖とし、すべての鬼は彼から生まれた、という設定となっているが、『過狩り狩り』ではなんと、異国から来た鬼が日本の鬼と対決する、というストーリーが展開。

 もともとは「吸血鬼」をモチーフにしているため、このような流れになったというわけだ。余談だが、『過狩り狩り』の劇中では異国の鬼が話す言葉は横書き、日本の鬼が話す言葉は縦書きになっており、細かな演出が面白い。

 さらに興味深いのは、『過狩り狩り』には『鬼滅の刃』の重要キャラクターが、すでに描かれているということ。

 アニメ版にも登場した「鬼でありながら、無惨に反逆する特殊な存在」である珠世と愈史郎が、『鬼滅の刃』とほぼ同様の姿で登場する。また、劇中に登場する鬼・時川の衣装は、無惨に酷似している。ただし、顔は全く別人のため、衝撃を受けることだろう。

弐ノ型:炭治郎は最初モブキャラだった?

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 『過狩り狩り』と『鬼殺の流』は主人公が炭治郎ではなく、目が見えない少年。『鬼殺の流』ではタイトル通り「流(ナガレ)」という名前だったが、目が見えず、隻腕、義足、顔には大きな傷があり、無口というかなりハードな設定。

 「鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」に収録されている初代担当編集・片山達彦氏の証言を参照すると、『過狩り狩り』をブラッシュアップした『鬼殺の流』が連載会議に落選してしまい、片山氏が主人公の変更を提案。

 その際に「明るくて普通のキャラクターはいませんか?」と吾峠氏に聞いたところ、当初は脇役で考えていたという「妹が鬼にされてしまい、治すために鬼殺隊に入る炭売りの少年」の存在が明かされ、主人公に昇格したそうだ。

 最初から炭治郎が主人公だったわけではない、というのは、なかなか驚きの事実ではないだろうか。

 なお、「鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」には、『鬼殺の流』も収録されている。『過狩り狩り』については、「吾峠呼世晴短編集」を参照いただきたい。

2020.12.06(日)
文=SYO