「何も起こらない」が社会現象になるとき
日常系の朝ドラは、いま求められている。NHK総合の昼の枠で再放送中の『ひよっこ』が改めて話題になり、2025年度後期の『ばけばけ』も人気を博した。災害が続き、経済にも社会にも不安が大きい時期に、朝の15分に大きな物語を求めない人は多い。そこへ、リアルな会話劇で日常を描く書き手の代表格が、満を持して登場する。
この作品にあるのは、何も起こらない日常だけだ。それが社会現象にまでなり得ると思うのは、バカリズムの会話劇が覚えて口に出したくなるからだ。『ホットスポット』でも、宇宙人の設定以上に他愛ない会話が繰り返し引用された。毎朝15分が半年続く形式は、その性質と相性がいい。
森田は、何も起こらないという看板をこう言い換えた。
「何も起こらないものを描くというよりは、みんなが何も起こっていないと思っているものが、実は起こっているんだよということを伝えられるドラマになっているんじゃないかなと思っていて。小さな幸せとか小さな笑顔とか、ちょっとした会話で人との関係性が変わったりとか、日々みんなが思っているけれど言えないことであったりとか。ものすごく共感してもらえる脚本になっているなと思います」(森田氏)
事件が起きないことを成果とする部署を、大事件の起きない15分で描く。朝の時間帯によく合っているのではないか。
森田は取材会の前日に30歳を迎えた。同じ節目を、『虎に翼』の現場でも見ている。親友・米谷花江を演じていたとき、主演の伊藤沙莉が撮影期間中に30歳の誕生日を迎えた。
「朝ドラで伊藤沙莉ちゃんがちょうど30歳のときに主人公として現場に立たれているのを見て、30歳の節目にこんな素敵な朝ドラで1年やってらっしゃるのは、ものすごく素敵なことだなと思った記憶があって。それをものすごく客観的に見ていたので、まさか自分も同じように30歳をこんな素敵な場所で迎えられるとは思っていませんでした。本当に人生、何があるかわからないなと思います。まだまだふわふわした気持ちですけど、もう感謝しかないです」(森田氏)
放送は2027年春。朝の15分が、何も起きない毎日の側にはっきり立つ半年になりそうだ。
