「いま、視聴者が最も信頼を寄せる俳優は?」と問われたとき、真っ先に名前が浮かぶ一人が、岡山天音ではないだろうか。出演中のドラマ「さよならノワール」(カンテレ系)は、9月15日(火)にいよいよ最終回を迎える。


物語と私たち視聴者の“あいだ”に静かに立つ存在

 ここ数年だけでも、話題作のクレジットには必ずといっていいほど彼の名前がある。「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)の元気、「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ)の綾野先生、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の恋川春町、「ひらやすみ」(NHK総合)のヒロト……もはや「岡山天音の出演作にハズレなし!」と言っても過言ではないだろう。

 特に印象深いのは「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ系)だ。杉咲花演じる文筆家の文菜をはじめ、なにかと考えすぎてしまう人々を描いた本作において、“今泉力哉ワールド”の住人たちのなかで、視聴者にとって唯一の拠り所となっていたのが、岡山演じる小太郎だった。そう考えると、岡山が演じる役柄はいつも、物語と私たち視聴者の“あいだ”に静かに立つ存在なのかもしれない。

 「さよならノワール」(カンテレ系)で彼が見せる刑事・鴨居という一筋縄ではいかないキャラクターもまた、不思議と目を引きつけられるキャラクターだ。

 事件の解決をもって幕を閉じることの多い刑事ドラマにおいて、ベテラン脚本家・井上由美子が目を向けたのは、その先にある“犯罪被害者支援”。元マル暴の刑事として支援に奔走する夏海(小池栄子)と同じく、刑事の鴨居(岡山天音)もまた、当事者のひとりだった。20年前、鴨居の幼い妹は事件に巻き込まれ、命を落としていたのである。

 “犯罪被害者支援”の仕組みが今ほど整っていなかった時代に傷ついた人たちは、どうなるのだろう、と心のどこかで思っていた。だからこそ、事件当時の鴨居を抱きしめるかのように、大人になった彼へ手を差し伸べる絵梨子(北香那)とのシーンに、救われたような気持ちになったのだろう。長い暗闇にようやく別れを告げた鴨居の姿に、「さよならノワール」というタイトルの意味が重なって見えた。
 

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