名バイプレイヤーから変容を感じ始めた作品は…
若手名バイプレイヤーといえば、長らく岡山のほぼ一強状態であった。もちろんプライム帯のドラマにも数多く出演してきたが、「ゆうべはお楽しみでしたね」(MBS)や「直ちゃんは小学五年生」(テレビ東京系)など、ドラマファンが目を光らせる良質な深夜ドラマには、だいたい岡山天音がいた。
ところが、ここ一、二年で、彼の立ち位置は一気に変わったような気がする。任される作品も役も大きくなり、気づけば物語の中心に立つ俳優になっていた。「ブレイク」と呼ぶにはあまりに月並みすぎるが、驚くほど自然に、次のフェーズへと歩みを進めたのだ。
筆者がその変容の兆しを確信したのは、2025年放送の単発ドラマ「どうせ死ぬなら、パリで死のう。」(NHK総合)だった。
ぼんやりと希死念慮を抱えながら生きる哲学者・吉人を演じた岡山。妊娠中の姉から甥・幸太(森 優理斗)を預かり、思いがけない共同生活を送ることになる。幸太もまた、小学生ながら世の中にどこか諦めを抱えて生きる少年だ。年齢も立場も異なる二人は、誰にも理解されなかった“生きづらさ”をきっかけに、少しずつ心を通わせていく。
吉人という男は、面倒くささと愛おしさ、さらには切実さまでを併せ持つ複雑なキャラクターだ。やや捻くれているのだが、その奥には、本人さえもうまく扱いきれない寂しさが滲み出る。この絶妙な塩梅の人物を誰に託せるだろうと考えたとき、真っ先に浮かぶのは、やはり岡山天音ではないだろうか。
「どうせ死ぬなら、パリで死のう。」と「べらぼう」(NHK総合)を皮切りに、2025年の岡山天音は快進撃を続けた。代表作となった「ひらやすみ」(NHK総合)に加え、2026年も「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ系)、岡田惠和脚本の単発ドラマ「片想い」(NHK総合)、そして「さよならノワール」(カンテレ系)と話題作への出演が途切れない。
ドラマをあまり見ない人にこそ伝えたい。「何を見ればいいか分からない」と迷ったなら、まずはこのラインナップから選べば間違いない――そう断言できるほどだ。
