「社会化」が広げてくれた、愛猫との新しい世界

 社会化の成果を強く実感した出来事もあったという大坂さん。

「1歳になる前に目に炎症が起きて、1日3回目薬をさす必要がありました。最初は嫌がりましたが、目薬のあとに必ずお気に入りのおやつをあげるようにしたんです。『嫌な経験は良い記憶で上書きする』と教わっていたので、それを信じて続けました」

 すると、目薬を見ると自ら近づいてくるように。

「今では病院も怖がりません。月に一度、爪切りで通っていますが、ほとんど嫌がらないんです。健康管理がしやすいことは、飼い主にとっても本当に大きな安心材料です」

 こうした経験を通して、大坂さんの中で「社会化」の意味はよりはっきりとしたものになったといいます。

「社会化は猫に何かを強いることではなく、猫が生きやすくするための選択肢を広げることだと思っています。もちろん、猫によって性格や適性はあります。

 ドロくんはラッキーなことに、小さいころから外をあまり怖がらず、オフィス出社を楽しんでくれていますが、もし嫌がるサインを出していたら、もちろん、無理に連れてくることはしませんでした」

 言葉は通じなくても、ボディーランゲージを読み取り、歩幅を合わせる。その積み重ねが、オフィス出社という特別な体験を当たり前の日常に変えました。

「社会化のおかげで、ドロくんと共有できる場所や時間が増えたことは、私にとっても最高の幸せです」

 後篇では、獣医師の井上先生に「子猫の社会化」について詳しく解説いただきます。

次の記事に続く 猫の「社会化」は、一生続く幸せへのパスポート。子猫のう...