猫によって生まれた『満月珈琲店の星詠み』シリーズ
――「星遣いの猫」というアイデアは、どのように生まれたのですか?
満月珈琲店の世界観は、桜田千尋先生のイラストにインスパイアされて生まれたものですが、桜田先生が描かれていたのは、三毛猫のマスターと、夜空の下に現れるトレーラーカフェという幻想的なビジュアルがすべてでした。そこで、私が星と猫を結びつけた“星遣いの猫”という設定を、後から加えました。
金星の猫、水星の猫、といった形で星を擬“猫”化していったのは、占星術を物語として自然に届けたかったからです。自分の軸で優雅に生き、人に合わせすぎない猫の在り方は、満月珈琲店の世界観ともすごく重なっていると思います。占星術をそのまま説明しようとすると、どうしても難しくなってしまいますので、猫という存在を通すことで、より伝わりやすく書けたのではないか、と自分では思っています。
――『満月珈琲店の星詠み』シリーズは猫によって生まれた物語、ともいえますね。
そうですね。猫を知らないままだったら、『満月珈琲店の星詠み』は少なくとも、今のかたちの物語では書けていなかった気がします。
自分の感覚に正直に生きている猫と出会ったことで、私自身の考え方が変わり、物語が動き出したように思います。
――猫との出会いで望月さんご自身の価値観も変わったということですか?
はい。猫との暮らしは、『満月珈琲店の星詠み』という物語だけでなく、私自身の人生そのものも前に進めてくれました。猫は無理に合わせたり、期待に応えようと頑張ったりしません。家族の中でも、好意を向けてくれない相手には無理に近づかない一方で、“この人”と決めた相手には、ためらいなく心を開く。そんな、人間にはなかなかできない潔さも、私を支える指針になっています。
――猫のように生きたいと思うことはありますか?
私が、というよりも、むしろ人はみな、もっと猫を見習うべきだと思います。私たちはどうしても、人間関係の中で気を遣いすぎたり、自分を押し殺してしまったりして、「こうしないと嫌われる」「こんな自分を出したら受け入れてもらえない」と考えてしまいがちです。でも、猫を見ていると、そこまで自分を曲げなくてもいいし、自分の居心地のよさをもっと大切にしていいのではないかと思えてきます。
わがままではなく、自分の感覚に正直に生きる猫の奔放さを見習うと、私を含め、もっと生きやすくなる人が増えるのではないかと思っています。
――ありがとうございました。インタビュー後篇では、作品の大切なキーワードでもある“占星術”について伺います。
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『満月珈琲店の星詠み』
望月麻衣 画・桜田千尋
定価 770円(税込)
文春文庫
世界28カ国で翻訳され、累計60万部に達する大人気シリーズ。満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、優しい猫のマスターと星遣いの店員が、極上のスイーツやフードとドリンクで客をもてなす。スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家……マスターは訪問客の星の動きを「詠む」。悩める人々を星はどう導くのか。美しいイラストにインスパイアされた書き下ろし小説。

