山廃仕込みの酒蔵になぜ薬師如来像が?
旅に出ると、その土地のお酒を味わいたくなるもの。なにより、この豊かな環境で生まれる地酒なら、きっとおいしいはず。「富士高砂酒造」は、富士山とともに世界遺産を構成する富士山本宮浅間大社の近くで、1830年から続く老舗の蔵元だ。
創業以来続いている酒造技術は、天然の乳酸菌を利用した山廃仕込み。東北や北陸地方の山廃酒と比べると少し甘く感じるのは、超軟水である富士山伏流水の仕込み水と、蔵に自生する微生物の働きによるもの。
歴史と伝統の酒造りの技は、酒蔵見学で見ることができる。1日4回行われる45分間の酒蔵ツアーでは、貯蔵タンクや江戸時代の酒造道具などを見学。解説はとても丁寧で、酒造りへの熱意が伝わってくる。
蔵の中に薬師如来像が祀られていることに驚くが、これは江戸時代に富士山に祀られていたもの。明治初期の廃仏毀釈(仏教排斥運動)で取り除かれたものを引き取り、密かに保存していたのだそう。
右:酒蔵見学コースには、江戸時代の酒造道具も展示。
代表銘柄の高砂は、地元の富士宮はもとより、静岡県を代表する地酒。日本酒にしては珍しいビタミンカラーのラベルも個性的で、お土産にしたら喜ばれそう。そのほか、梅酒やヨーグルトリキュールなども揃う。
右:酒造見学の後は試飲も。
富士高砂酒造
所在地 静岡県富士宮市宝町9-25
電話番号 0544-27-2008
営業時間 8:30~18:00(月~金曜)、10:00~17:30(土・日・祝)
定休日 1月1日・2日
※蔵見学は前日の17:00までに要予約
URL http://www.fuji-takasago.com/
2016.03.28(月)
文・撮影=芹澤和美