新しい技法と表現方法を模索していたところ……

 ここ数年、私はアクリル絵の具で絵を描くという今の作品の作り方以外の、新しい技法と表現方法を模索していました。「なにか日本的なものを取り入れたい」という気持ちも漠然とあったので、日本画や水墨画、浮世絵、お花、器などの展覧会を中心に観て回るようになりました。

『クライマーズ・ハイ』横山秀夫・著/松尾たいこ・イラスト(文春文庫)から

 そして昨年の初めには水墨画を習い始めたのですが、これはあまりピンときませんでした。しかし、次に通った陶芸教室では、自分の手を使って形ができていくことがとても楽しくて、毎回あっという間に時間がたちます。私も「触って楽しめる作品を作ってみたい!」、そんな気持ちが日に日に大きくなってきました。

 それから3カ月ぐらいたった頃、久しぶりに会った福井の友人に「陶芸を習っている」と話したところ、なんと彼は福井市内に工房を開いたばかりだったのです。陶器を焼くための窯もあり、陶芸に必要な道具は全て揃っています。「いつでも制作しにきていいよ」という言葉に全面的に甘え、昨年の夏から福井通いがスタートしました。

福井で制作した陶画作品「夜はいつも、明るい朝を待つ時間」。

 毎月3日~1週間ぐらい、福井市内のホテルに泊まり、工房に通う日々。そこで出会ったのが「陶画」でした。これは陶器で作った板の上に、絵を描いて焼き上げる表現方法です。土で作った絵の具には、きれいな色が多くあることに驚きました。これなら、私の持ち味も活かせて新しい作品が作れる! ひたすら試作を繰り返し、私らしい納得できる作品ができるようになりました。また、福井には越前焼があることを知り、そのプリミティブさに強く惹かれ、越前焼の皿の上にポップな絵を描くという、今までにないカラフルで立体的な陶画作品も作り始めました。

2015.11.03(火)
文・撮影=松尾たいこ