世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第108回は、たかせ藍沙さんが、フィリピンのボホール島を旅し、森で、空中で、海で、そして川で、思う存分遊びまくります!

体長たった10センチ! 森の小さな仲間たち

「お静かに(SILENCE PLEASE)」、「フラッシュ撮影禁止(NO FLASH WHILE TAKING PICTURE)」の看板が。その上には、手書きで中国語の注意書きも書かれていた。

 マニラから国内線のフライトで約1時間15分、セブ島からならフェリーで約1時間30分。7107の島々から成る群島国家フィリピンで10番目に大きなボホール島に行って来た。島に暮らす約130万人のうちの多くが農業や漁業で生計を立てていて、島内には信号機が4機しかないという、いたってのどかな島だ。また、ボホール島南西の沖合に浮かぶバリカサグ島周辺は、フィリピン有数のダイビングポイントとなっている。

 まずは、この島の観光の目玉でもある、世界最小のメガネザル「ターシャ」に会いに行くことにした。成長しても体長10センチメートルほどにしかならない、手のひらにのってしまいそうな小さなサルだ。向かったのは、島内にあるふたつの保護施設のうちのひとつ、「ターシャ保護センター」。入場料を支払い、中に入ると「お静かに」、「フラッシュ撮影禁止」という看板があった。その横を通って森の中へと登っていく。

 ターシャは夜行性なので、カメラのフラッシュは目に負担が大きすぎるのだ。また、皮膚がとても繊細なため、触ることも禁止されている。小さいながらも寿命は約20年で、メスは、年に1匹の子供を産んで大切に育てるのだという。生まれたての子供はとても小さいので、父親が好物の昆虫と間違えて食べてしまうこともあるのだとか。そのほか、ネズミ、ヤマネコ、ヘビなど、森には天敵がたくさんいる。保護センターでは、子供が無事に育つよう、きめ細やかなケアを欠かさないという。

左:いた! ターシャだ! 目が半開きで眠そう。
右:暫くすると目を開けた! でもやっぱり眠そう(笑)。

 そんな話を聞きながら森の小径を登っていくと、ガイドのジンガイさんが木の幹を指差した。こんなに簡単にターシャに遭遇できるとは! 木の枝を抱きかかえるようにして、小さなサルが眠っていた。「わーっ!」と声を上げたくなるところを必死で我慢。大きな声を出すとターシャにストレスがかかってしまうからだ。

ターシャが休んでいる木は、柵で守られている。観光客は柵の手前から写真を撮る。下の写真はとても近く見えるけれど、実はかなりの望遠レンズで撮影したものだ。
左:こちらのターシャも目を開けた! この大きな瞳がメガネザルと呼ばれる理由。夜になると動きだし、瞳孔を大きく広げて目を利かせ、昆虫を食べているという。
右:でも、やっぱりうとうと……。かわいい!(笑)

 ターシャが休んでいる木は柵で囲まれていて、観光客の手が届かないようになっている。ときおり目を開けると、みんな、小声で教え合う。小さな天使に、大きな人間たちが一喜一憂!(笑) それにしても、なんてかわいい!

保護センターの出口には、記念撮影用の顔ハメ看板があったり、土産物店が並んでいたり。キーホルダーの山を見て気がついた。何かに似ていると思ったら、映画に出てくる「グレムリン」だ!(笑)

2015.10.20(火)
文・撮影=たかせ藍沙