ご当地のお楽しみ その2
「超絶イケメン王が主人公の舞『蘭陵王』とは?」

舞楽の歴史について教えてくださった森川道弘さん(左)と、日本に3つしかないうちの1つという貴重な蘭陵王の面を手に、舞の難しさを語る立山淳さん(右)。

 華やかな衣装とテンポが速まっていく舞に目が釘付けになる舞楽「蘭陵王」。この日、舞い手を務めた「界 出雲」のサービスチームの立山淳さんと、雅楽の演奏と舞楽の指導に来られている「こころ音」雅楽會の森川道弘さんに、舞楽についてうかがった。

 まずは森川さんから。「中国から伝わった唐楽と朝鮮半島から伝わった高麗楽があり、飛鳥時代の昔に雅楽寮が創られて、大きな寺社の儀式を担っていました。平安時代には、こうした儀式だけでなく貴族達の楽しみとして発展しました。ここで舞われる『蘭陵王』は、一人で舞う走り舞の一つで、数人でゆったりと舞う平舞より動きが大きいのです。雅楽の代表的な演目の一つで、中国南北朝時代に実在した、北斉の高長恭(蘭陵王)が余りにもハンサムで美声の持ち主でもあったので、兵士達が見惚れて士気が上がらないために、わざと恐ろしい仮面をかぶって戦いに臨んで勝利したという逸話に基づいたものです」と、演目の「蘭陵王」についても解説してくださった。

 演じた立山さんは「1年近く指導していただき、今年から界のスタッフが舞っています。重い装束を着けて、目の前が見えない面をかぶって演じるためには、感覚で立ち位置をつかまなくてはならず、これがかなり難しいのです。特に晴れた日には、竹庭に作った舞台の上で舞うので、下手をすると舞台から落ちますから。1曲の中でテンポがだんだん速くなって来るので、基本の所作を覚えてからこの流れを学んで、かなり練習しました」と語る。

左:古代から継承されてきた舞楽を今に伝える森川さん。
右:修練を積んだ成果を披露する界のスタッフ。

 「雅楽では楽器を演奏する人が舞楽もするので、音楽が分かった上で舞えますが、舞だけを身につけるのは間合いをつかむのが大変なんですよ」と森川さんも言う。

 蘭陵王の面は、頭の上に龍が乗っているかなり恐い面。こんな仮面の下にイケメンの顔を隠して戦ったという話を聞くと、この勝利の舞もまたひと味違う面白さがある。最後にスタッフが面を取って、そんな種明かしのような話をするのもまた一興だ。

2015.10.18(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹