開発の波に飲まれた牡蠣産業は衰退の一途
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一連の施設での取材を終え、最後に訪ねたのは牡蠣レストラン。専属の養殖場で育てた牡蠣をさまざまな料理で提供している店だ。テーブルにずらりと並んでいるのは、大粒の牡蠣を使った広東料理。牡蠣は大味に見えるが、食べてみるとミルキーでなかなかおいしい。海外取材中に牡蠣などの貝類を食べるのはちょっとリスクが高い。だが、火は通っているのだから心配はなさそうだ。
そう思って牡蠣をふんだんに食べ、マカオへ帰った翌々日のこと。体調が急に悪くなり、ホテルで寝込むはめに。それまでの無茶なスケジュールがたたったかと思いきや、同行した写真家さんもダウン。アレルギーのため、泣く泣く牡蠣を口にしなかった女性編集者だけが、異変なし。どうやら、私たちは横琴島で食べた牡蠣に当たってしまったようだ。
後から思えば、加熱してあるとはいえ、養殖場の水は濁っていたし、いたるところが工事中で、牡蠣が育つ環境はお世辞にもクリーンとはいえなかった。あの牡蠣で体調を崩してもそれほど不思議ではない。
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右:田舎とはいえいたるところが工事中で、牡蠣が安全に育つ環境ではなかったと、今は思う。
かつての横琴島は、一面にバナナ畑が広がり、牡蠣の養殖が盛んに行なわれていた素朴な田舎だったという。だが、私たちが訪れたのは、一大開発が始まった頃。スーツ姿のおじさんたちを乗せた車が土埃をあげながらあぜ道を走っていた不自然な光景も、今となれば頷ける。横琴島を訪ねる企画を考えてから足を運ぶまでの数カ月の間に、急ピッチで大開発計画が進み、自然環境が悪くなってしまったようだ。
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聞けば、横琴島は経済特区の中でも最も重要なランクに指定されているのだそう。私たちが訪ねた2年後には、世界最大の水族館を擁するエンターテイメント施設も誕生している。横琴島に限らず、珠江デルタ都市の開発はすさまじく、香港とマカオ、中国広東省の珠海を結ぶ世界最長の海上橋も、目下、建設中。近い将来、開通する予定だ。
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2015.09.08(火)
文・撮影=芹澤和美