本を一冊たずさえて、次なる一冊を求めておでかけする。そんな、まさにブックラバーの理想の休日を叶えてくれる、一筋縄ではいかない東京の本屋さんたちをご紹介します。

» 第1回 コーヒーも楽しめる本屋さん「本とコーヒー tegamisha」
» 第2回 一冊だけ売る本屋さん「森岡書店 銀座店」

◆ SNOW SHOVELING (スノウショベリング) <東京・深沢>

本好き人が交じりあう秘密のアジト的本屋さん

 本屋、という自覚がないかもしれません」と店主・中村秀一さん。重い鉄の扉を開けて入るやいなや、ある種の文学的な胸騒ぎのするほの暗い空間。イメージソースとなったのは、中村さんがかつて通い詰めたNYの書店。

 人が絶えず出入りし、店主と客、客同士が他愛ない会話を愉しみに集う。「その人の背景が見えやすい」本は軸に据えつつも、壁の展示作品を見るもよし、あるいは中央のソファに鎮座し、コーヒーやビールを飲みながら、バックギャモンに興じるもよし。

ジャンルはビジュアル書から文学までさまざま。そこにサッカー、カレーに村上春樹……店主の好みが散見できるのが面白い。

 「きっかけは多いほうがいいから」と、さまざまなテーマのイベントも随時行われている。人生の向きを変える人との、人生を嚙みしめる本との出会いがありやなしや。分からないから、まずは行かなきゃ始まらない。そんなお店。

2015.08.27(木)
text=Mitsuharu Yamamura、Asako Fujino(BOOKLUCK)
photographs=Takafumi Matsumura

CREA 2015年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

本とおでかけ。

CREA 2015年9月号

街へ公園へ、空想の世界へ
本とおでかけ。

定価780円