世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第94回は、芹澤和美さんが、9年前に中米のホンジュラスを訪ねた旅の思い出を綴ります。

日本から35時間以上かけて、首都テグシガルパに到着

現地で出会った子どもたち。人懐っこくて、とにかく元気。

 ホンジュラスを訪れたのは、2006年のこと。日本ではマヤ遺跡や特産品のコーヒーが知られるこの国は、近年になって治安の悪さが知られるようになり、外務省の海外安全情報も現在、「渡航の是非を検討してください」となっている。だが、当時は常識を持って旅していれば怖い思いをすることもなかったし、なにより素朴でおおらかな国だった。

 中米の中でも人気の観光国だったホンジュラスは、2009年の政変による影響で失業者が増加、治安情勢が急激に悪くなってしまったのだという。今回は、ローカルの人々の笑顔に触れた9年前のホンジュラスの写真を、思い出とともに虫干し。

ホンジュラスの首都、テグシガルパを走るバスはとてもカラフル。

 日本からロサンゼルス、中南米エルサルバドルのサンサルバドル、サンペドロスーラ(ホンジュラス最大の経済都市で大規模な空港がある)を経由して、首都のテグシガルパへ。日本を発って約2日後にたどり着いた街は、案外と空気がからっとしていて気持ちがいい。テグシガルパは新市街と旧市街に分かれている。新市街は高層ビルが並ぶ大都会だが、旧市街はカラフルな建物や露店が並び、活気に満ちてとても賑やかだ。

果物や雑貨を売る屋台の店。こんな露店が、街のいたるところにある。
露天のCDショップ。同じテントの下にはずいぶんと開放的な下着屋もある。

 テグシガルパで出会った人たちはみな、はにかみながらもフレンドリーだった。とくに子どもたちはとても明るくて素直。

 博物館を見学していたときのこと。校外学習中の小学生のグループに出くわし、カメラを向けたとたん、大勢に囲まれてしまった。東洋人が珍しかったのか、「チーノ? ハポネッサ?(中国人? 日本人?)」と人懐っこい笑顔で話しかけてきて、大はしゃぎでカメラに収まろうとする。

 銀行や高級レストランの前には銃を構えたガードマンがいてちょっと物々しかったけれど、街の人たちは気さくだし、日中の街中はいたってのんびりとしたものだった。

テグシガルパの子どもたち。ハイスクールの女の子は、自慢のダンスを披露してくれた。

 この旅で楽しみにしていたのは、カリブ海沿岸の都市ラ・セイバと港町テラ。同じホンジュラスでも、内陸部の都市とカリブ海沿岸の都市では、街の雰囲気も人の感じも異なると聞き、ぜひ行ってみたいと思っていたのだ。テグシガルパで取材を終えた後、期待に胸をはずませ、小さなプロペラ機でラ・セイバへと向かった。

テグシガルパからラ・セイバへはプロペラ機で移動。

2015.07.14(火)
文・撮影=芹澤和美