横倒しになっても鳴り響く、圧巻の枕太鼓
おねりが始まる頃になると境内には規制のロープが張られます。
■ 午後7時
祭り情緒を盛り上げるのが「獅子舞」です。篠笛の細い高音と太鼓のリズミカルで素朴な旋律。行列の装束はというと、胸にさらしを巻き、法被に袴。背中に大きな蝶を結び、その先を豊かに垂らす長いたすき。すべて木綿の夏装束です。行列の多くはかわいらしい小学生です。
■ 午後7時半
勇壮で煌びやかな「金銀神輿」のおねり。
■ 午後8時
最大の見どころ「枕太鼓」のおねり。
「ああ、これ天神祭で同じようなん見たことあるわ~」とおっしゃる人には是非両方の違いをご覧いただきたい。
いくたまさんの祭の華といえば、緋色の長い烏帽子をかぶる願人(がんじ)です。願人の背には、太鼓のバチが4本、幾重にも美しく巻かれた紐の帯に挟んであります。これは装飾だけではなく、かつて大阪城では非常時に縄梯子になるものだったそうです。実は願人は豊臣家の忍者の末裔であるという伝承があります。まるで、耳をそばだて密談をするかのように顔を寄せ合う所作がありますのでお見逃しなく!!
枕太鼓は、太鼓台に据えられた大きな枕と太鼓の間に足を挟むように6人の願人が乗り込むので、その名があります。
車輪があり、想像を超える猛スピードで境内を所狭しと走ります。
上下に揺らし、回転し、あげくの果てにはドッカーンと横倒しにされます。驚いた見物客が悲鳴をあげることも。どんな状態にあっても願人は振り落とされないよう体勢を維持し、太鼓を打つことをやめません! この雄姿を見ようと境内は人で溢れかえるのです。
さて、祭の終わりを惜しむ願人の太鼓を聞きながら帰ることにしましょう。
カラコロと下駄を鳴らして神社を出ようとすると、夜店が並ぶ雑踏の中を5、6人の男の子がワーとやってきて私にぶつかりながら走り去りました。それは一瞬、小学校3年生だった息子と仲間達に見えた気がしました。
「こら~待ちなさい!」と言いかけた私自身も一瞬あの頃の私に戻っていました。子育てに無我夢中、なかなか絵に集中出来なくてもがいていた……。ふと我に返るとなつかしさに涙が溢れそうになっていました。
むせかえるような真夏の夜の幻影。忘れかけていたあの頃に、祭り囃子が私を引き戻したのでしょうか。
生國魂祭
● 宵宮(7月11日)
枕太鼓、中太鼓、子供太鼓、子供みこし、金銀神輿、生玉囃子、獅子舞、氏子地域の巡行
・獅子舞おねり 午後7時
・金銀神輿おねり 午後7時半
・枕太鼓おねり 午後8時
● 本宮(7月12日)
午前10時 渡御(おわたり)出発
生國魂神社~元宮駐輦祭(大阪城公園)~行宮祭(本町橋)~還幸祭
※おねりは11日に同じ
生國魂神社
所在地 大阪市天王寺区生玉町13-9
電話番号 06-6771-0002
アクセス 地下鉄「谷町九丁目」下車徒歩約4分、近鉄「大阪上本町」下車徒歩約9分
URL http://www.ikutama.com/
中田文花(なかたもんか)
日本画家。描く事で仏教や日本の伝統文化を伝える。院展、万葉日本画大賞展など多くの公募展に入選。平成23年東大寺にて得度、在家尼僧となる。薬師寺機関紙挿絵、知恩院機関紙表紙絵を連載中。趣味:短歌、舞楽、龍笛、茶道。
ホームページ「文鳥寺画房」 http://bunchoji.com/
Twitter https://twitter.com/nakatabuncho
Column
尼さん日本画家 中田文花と遊ぶ古都風物詩
大人になったら東大寺でお土産を売る人になりたかった――お寺好きがこうじて尼僧になった関西在住の日本画家・中田文花さんが、関西の伝統文化と美の世界を分りやすく案内します。
2015.07.04(土)
文・撮影=中田文花