「陸のいくたま、川の天神」と並び称された夏祭

 行列を仕立てて大阪城にある元宮跡の御旅所までを往復する、いくたまさんの陸渡御(りくとぎょ)は、かつては2000人を越える大規模なもので、天神祭の「川の天神」に対して「陸のいくたま」と呼ばれていました。

 しかし、残念なことに大阪大空襲で本殿と共に御鳳輦(ごほうれん)など多くの神宝類が焼けてしまったのです。

 昨年の平成26年、70年ぶりに往時の姿の復興をめざすことになりました。それは何より氏子の皆さんの大きな夢でした。

 陸渡御の中心となる御鳳輦が奉製され、古式ゆかしい装束に身を包んだ輿丁32人により担がれました。八乙女や御神宝、神馬、馬車なども加わり、およそ500名の渡御の大行列がビジネス街を練り歩きました。行列の長さは500メートルに及びました。

ビジネス街を行く陸渡御の御鳳輦。(撮影:生國魂神社)

 その行列の中に神様の杖の代わりとなる一人のお稚児さんがいます。それを「白杖代」(はくじょうだい)といい、白木の杖を持ちます。

 清浄無垢な子供は古来より神に最も近い性格のものとして、祭礼の場における神の憑座(よりまし)という重要な役をつとめます。

平成17年に白杖代をつとめた中田一葉くん。

 数年前、我が家の息子が小学校3年生の時、この「白杖代」に選んでいただきました。

 祇園祭のお稚児さんに選ばれるくらい……というと言い過ぎですが、それくらい大変名誉なことでした。

 お能の子方として幼少より活躍していた息子は装束も着慣れたものです。

 「暑さにだれることもなく、ずっと背筋を伸ばしてえらかったね!」と神職さんにほめていただくことが出来ました。

 今も名前の入った大団扇は家の廊下に大切に飾ってあります。

「いくたま締め」をマスターしよう

 大阪の夏祭に行くとよく目にする手締めがあります。

 いくたまさんが発祥で、天神祭の「大阪締め」の正調です。

 渡御の到着時やおねりの後など、たびたび見られます。観客ももちろん参加OK。むしろ振られますのでご紹介しておきます。

「いくたま締め」

打ちましょ(ちょん・ちょん)
も一つせ(ちょん・ちょん)
祝うて三度(ちょん・ちょん・ちょん)
めでたいな(ちょん・ちょん)
ほんぎまり(ちょん・ちょん)

2015.07.04(土)
文・撮影=中田文花