さて、ここから紹介するのは、マレーシアの周辺に位置する東南アジアの国の店です。アジアの料理は、複数の国で同じ名前の料理が食べられていることが多く、サテーもそのひとつ。マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイなどで食べられています。ただ、それらは同じ名前ではありますが、各民族の嗜好に合わせて味が変化し、様々なバリエーションがあるのです。それでは、各国の自慢のサテーに注目してみましょう。

■チャベ目黒通り店/インドネシア料理店【東京・目黒】

サテ・チャンプル1,300円(盛り合わせ6本)。ピーナッツソースをかけた鶏肉のサテー(右端)には、さらに「ケチャップマニス」という甘い醤油をつけるのがインドネシア流。

 目黒通りにあるインドネシア料理店。どの時間帯に行っても、インドネシア人がご飯を食べながらおしゃべりしている姿に遭遇し、さながら現地の屋台のよう。サテーは、鶏肉、牛肉、羊肉、鶏つくね、海老と種類豊富で、どれも手間をかけて仕込んだもの。たとえば牛肉のサテーは、焼く前にココナッツミルクと数種のスパイスで煮込むことで、やわらかな食感に。鶏つくねのサテーはスパイスが口の中で弾けます。どれもやみつき一直線の味です。

URL https://www.facebook.com/IndonesianRestaurantCabeMeguro

■マカンマカン/シンガポール料理店【神奈川・大和】

マカンプレート1,300円(税込)。香ばしく炙ったサテー、クリーミーな牡蠣の春巻、ピリッと辛いナシゴレン、爽やかな漬物のセット。

 笑顔が爽やかなシンガポール人のシェフ、ジェームズさん。丁寧に作る料理は、多くの日本人ファンを魅了してやみません。ここのサテーは、自慢のピーナッツソースをお肉が見えなくなるほどたっぷりかけて食べるのが特徴。ピーナッツのコクの中に唐辛子の辛みをしっかり感じる味です。おすすめはランチ限定の「マカンプレート」(1,300円・税込)。前菜からナシゴレンまで、この一皿でシンガポールの食文化をたっぷり堪能できます。

URL http://www.makanx2.com/

■インター/タイ料理店【東京・小岩】

ムーサテー(豚7本)とガイサテー(鶏3本)1,500円。前日までに要予約。本数のリクエストは可能だが、10本以上より注文可。

 小岩の歓楽街にあるディープなタイ料理店。ここでは、タイの定番である豚肉(ムー)のサテーが味わえます。特製のカレーペーストにじっくり漬けこんだ豚肉は、ほんのり甘い味つけ。これだけ食べてもおいしいのですが、ピーナッツソースと野菜の酢漬けの2種のソースを加えると、食欲はもうエンドレス。タイ語のカラオケを聞きながら、シンハービールをかたむけ、サテーをつまめば、最高の夜が更けていきます。

URL http://tabelog.com/tokyo/A1312/A131204/13177345/

■海南鶏飯食堂 麻布店/シンガポール料理店【東京・麻布】

タフゴレン850円。タフは豆腐、ゴレンは炒めるという意味。サテーと同じピーナッツソースで豆腐を炒めている。(写真提供:鈴木謙太郎さん)

 最後は番外編。六本木ヒルズから徒歩3分、オーセンティックなシンガポール料理を提供するこの店では、厚揚げのサテーともいえる「タフゴレン」(850円)を提供しています。自家製の甘いピーナッツソースで厚揚げともやしを豪快に炒めた料理で、淡白な豆腐が旨みたっぷりの個性的な味に。ラクサ、チキンカレー、チキンライスなど王道のラインナップのなかで、この料理も秘かな人気だそう。ピーナッツソースの万能性を体験してみてください。

URL http://www.route9g.com/

 いかがでしたか。これほど本格的なサテーが日本でも食べられるなんて、幸せな時代になったものです。ありがたや~。さぁ、今週末はサテーでアジアにトリップ、といきましょう。

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2015.03.19(木)
文=古川 音
写真=古川 音、三浦菜穂子