「イーサン」はテーブルを汚すことが、福を呼ぶ!

イーサンの具を高く持ち上げるのは、「高」という文字に、「昇進」「給料アップ」「長寿」などの良い意味があるため。(写真提供:若杉秀俊さん)

「さーて、始めましょう」というかけ声とともに、箸を手に持って立ち上がり、テーブル中央に置かれたイーサンに集中。「スタート!」の声で、みんなでいっせいに具を混ぜます。正確にいうなら、混ぜるのではなく、具材を高く持ち上げて落とす。高く上げれば上げるほど幸運が舞い込むと言われていて、大胆に、勇気をもって、テーブルの惨状は気にせずに、エイヤッ! と落とすことが大事です。

左:家族、友人、同僚など、大勢でひと皿のイーサンを囲み、食べる前にみんなで混ぜる。このアクションが、イーサンという料理には欠かせない。(写真提供:イレーンさん)
右:高いところから具を落とすので、当然テーブルの上に飛び散るが、それはまったく気にしなくていい。家庭でやるときは、汚れ防止に新聞紙が敷いてあることもある。

 さらに、混ぜながら、各自の願い事を声に出して宣言するのも忘れてはいけません。たとえば「健康でありますように!」「給料アップ!」「彼氏が欲しい!」など、新年の抱負、夢をみんなに語るのです。

 また、イーサンはひとりでは決して食べません。家族、友人、同僚など、大勢で食べるものです。マレーシア人の友人曰く「イーサンを食べるのは、家族や友人に感謝し、今年も良い1年であることを願うため。ひとりで食べたら、誰があなたのことを願ってくれるの?」だそう。ひとつの料理を近しい人と分けることで、昨年のご縁に感謝し、新しい年もよろしく、という意味をこめる。願い事を口にするのは、私はこれを叶える! と周りの人に宣言する意味があるのかもしれませんね。

最初は綺麗に盛られたイーサンが、みんなで混ぜると、こんなふうに飛び散りまくる。この状態こそが、イーサンを堪能した、ということ。

2015.01.01(木)
文・撮影=古川 音