縁起のいい食材をたっぷり使ったお祝い料理「イーサン」

右手前の赤と緑は、ヤム芋に色付けして揚げたもの。タレや調味料(袋入り)は別々に提供され、食べる直前に混ぜる。写真のイーサンは刺身が豪華だが、ほんの切れ端程度が一般的。本来あまり刺身を食べないマレーシア人にとっては、それで十分。

 イーサンの大事な食材は刺身です。一番ポピュラーなのはサーモン。サバやマグロ、最近ではアワビを使った贅沢なものもあります。そのほかに、極細切りの大根、人参、キュウリ、らっきょう、揚げた餃子の皮、粗く砕いたピーナッツ、ポメロとよばれる柑橘系の果物など。そこに甘酸っぱいタレをかけ、全体をしっかり混ぜて食べます。味は、具だくさんの刺身サラダといった感じ。餃子の皮のカリカリ感、野菜のしゃきしゃき感など食感も絶妙で、おいしいんです!

 イーサンは日本のおせちと同じで、ゲンを担いだ料理です。刺身の生は「長生き」、柑橘系の果物は「繁栄」、タレに入っている油には「富の循環」、調味料の胡椒や五香粉には「幸運を引きよせる」、ヤム芋の緑は「若さ」など。

 さてさて。こんなに手のこんだおいしい料理なのですが、イーサンで大事なのは、じつは、味ではありません。初めにもお伝えしたとおり、重要なのはアクションです! 食べる前にみんなで混ぜる。これこそが、イーサンの醍醐味であり、重要な意味を持つのです。

2015.01.01(木)
文・撮影=古川 音