抱一畢生の傑作と名高い屏風作品

重要文化財「夏秋草図屏風」左雙 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives
重要文化財「夏秋草図屏風」右雙 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives

 中でも代表的な《夏秋草図屏風》は、御三卿(徳川将軍家や御三家に後嗣がない場合に後継者を提供する徳川氏の一族)、一橋治済からの注文で制作された、抱一畢生の傑作だ。もともとこの屏風は、光琳による《風神雷神図屏風》の裏面として制作されたもので、風神には秋の野分を、雷神には夏の夕立を対応させ、風雨に翻弄される夏草、秋草を、月光の暗喩である銀地を背景に描き出している。

 ほか《紅白梅図屏風》(サンリツ服部美術館 展示期間:10/26~11/16)、《波図屏風》(静嘉堂文庫美術館 展示期間:10/11~10/25)など、光琳作品と対照させたもの、俳諧の感性を反映させたものなど、洒脱で洗練された幅広い画業を、大都市江戸の文化潮流の中で捉えながら、抱一作品の魅力に迫る。

特別展『酒井抱一 ─江戸情緒の精華─』
会場 大和文華館 企画展示室 
会期 2014年10月11日(土)~11月16日(日)
休館日 月曜日 ※ただし11月3日(祝)は開館、翌11月4日(火)が休館
料金 一般930円ほか 
電話番号 0742-45-0544
URL http://www.kintetsu.jp/yamato

橋本麻里

橋本麻里 (はしもと まり)
ライター/エディター。1972年生まれ。明治学院大学非常勤講師。近著に『変り兜 戦国のCOOL DESIGN』(新潮社)、共著に『チェーザレ・ボルジアを知っていますか?』(講談社)、『恋する春画』(新潮社)など。

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2014.10.29(水)
文=橋本麻里