3カ国の国立博物館が合同で開催する初めての展覧会
このところ何かとぎくしゃくしている東アジアだが、文化交流の歴史は長くて深い。そんな日本、中国、韓国3カ国の国立博物館が合同で開催する初めての展覧会となるのが、この「東アジアの華 陶磁名品展」だ。中国という巨大文明。その隣にあって相互に影響を与え合ってきた朝鮮半島。そして大陸のほとりに浮かぶ日本列島は、中国に近づいたり遠ざかったりを繰り返す中で、自らのアイデンティティを作り上げていった。今展は、こうした日中韓相互の関係を、東アジアが共有する文化である陶磁器を介して、検証・確認しようという試みだ。
土器の制作は、縄文土器を持つ日本が群を抜いて早かったが、釉薬をかけて焼いた原始磁器は、商(殷)時代(紀元前17世紀末頃~紀元前1046年頃)後期に、中国、黄河の中下流域で複数見つかるようになる。そして突然、といっていいタイミングで青磁が誕生するのは、後漢時代の1世紀頃。白磁が誕生するまでには、北斉(6世紀頃)を待たなければならない。
日本では鉄分の少ないカオリン土に透明釉をかけ、高火度で焼いた、吸水性がほとんどない焼きものを「磁器」と定義するが、中国では磁器と陶器の明確な区別がなく、白磁土を用いたいわゆる「白磁」の生産は晩唐期からと考えられる。金属器やガラス器、玉器を珍重してきた中国の人々は、それらに匹敵する価値を白磁に認め、皇帝が用いる御器から庶民の食卓を彩る器まで、さまざまな色合いの「白」を生み出してきた。
またこの白い素地を生かして、盛唐時代(8世紀)には、その上でカラフルな釉薬が発色する「三彩」の製造が可能に。シルクロードを通って遠く東は日本、西はペルシャまで運ばれた三彩は大変な人気を博し、これを真似た陶器が作られた。当然わが国も例外ではなく、縄文土器以来続いていた素焼きとは別の、釉薬(緑釉)の施された焼きものが登場するのが、飛鳥時代。奈良時代には、緑釉に唐三彩の様式が融合した「奈良三彩」が現れる。
一方、朝鮮半島を代表する「高麗青磁」は、統一新羅時代には既に確立していた高度な土器の焼成技術に、唐時代の中国で名声を轟かせた秘色青磁の影響が加わり、9世紀頃に完成したと考えられる。そして少しずつ中国の影響を離れ、陰刻・陽刻・透かし彫りなどの彫り文様や象嵌、彫塑などによって多彩な装飾を加えた作品が作られるようになっていく。
古代から近世にいたる、こうした影響関係を窺わせる国宝《秋草文壺》や唐時代の《緑釉女子俑》、高麗時代の国宝《青磁亀形水注》など、各国15件ずつ、45件の名品が一堂に会する、見応えのある展覧会だ。
2014年日中韓国立博物館合同企画特別展『東アジアの華 陶磁名品展』
会場 東京国立博物館 本館特別5室
会期 開催中~2014年11月24日(月・祝)
料金 一般620円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL http://www.tnm.jp
2014.10.11(土)
文=橋本麻里