監督デビュー作が社会現象に
――それは具体的にどういったことでしょうか?
たとえば『復讐の絆』でも僕が演じた殺人鬼が登場します。観客は普通の映画と同じようにこれを悪人だと思うのだと思いますが、じつは彼はある事件の被害者でもある。そんな善悪のグレーゾーンを『キョンシー』でも掘り下げたいと思ったんです。『キョンシー』にも、夫がキョンシーになってしまったことで殺人を犯す老婆というキャラが登場します。でも、世界の映画祭を回っても、あのキャラが嫌いだという観客に僕は一人も出会っていません。観客の全員が彼女に共感し、憐れみを感じているんです。このように、善や悪、被害者や加害者など、見方を変えることで話の奥行きも多様に変化します。映画を通じて、それを描いていきたいんです。
――昨年、香港公開された『キョンシー』は社会現象ともいえる大ヒットになりました。映画監督として認められたことで、これまでバッシングしてきたマスコミに対する気持ちは変わりましたか?
いやいや、もともと彼らに"呪怨"なんてないですから(笑)。でも、『キョンシー』がヒットしたことによって、ここ数年撮られていなかったキョンシー映画が、ほかの監督で数本撮られることになったことは、うれしいことです。だからこそ、僕が続編を撮る必要はないし、次のステップに進めると思ったんです。
2014.10.17(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美