「元マルクス主義者」とか、どうですか

斎藤 ピーター・ティールは、自分のメッセージをエッジを利かせて切り込むためにも、「意識的に黙示録的な世界観を広めている」と語っていました。ニューヨーク市長であるゾーラン・マムダニは「明るい未来を!」と語る姿が素晴らしいですけど、同時にそれだけでいいのか? とも思ってしまう。ティールのような黙示録的メッセージの伝え方を、左派的な視点でやっているのが私の立場でもあります。

 ただ日本だとそもそもマムダニさんみたいな人もいないし、「今の状況には不満があるけど、野党じゃちょっと頼りないよね」という層に対して訴えるための役割も担わないといけない。日本では、自分が発信したいメッセージの、理想と現実に乖離が生まれているのが現状です。

大場 ハイデガーもウィトゲンシュタインも、30代に持っていた思想を、だいたい40代ごろになると転向するじゃないですか。斎藤さんは今39歳ですよね。そろそろ斎藤さんも「後期」に突入し、黙示録・資本論を超えるフェーズに入ってもいいのかも。「元マルクス主義者」とか、どうですか(笑)。

斎藤 マルクス主義者を捨てちゃうんですか(笑)。そんな簡単にはできないですよ。

大場 どうしても日本だとマルクスは労働価値説とかのイメージが強すぎて、「そんなのダメだろ」で終わっちゃう人も多い。そうじゃないマルクス主義者もいっぱいいることを知らない人も多いと思います。終末論的な感覚がない日本に向けては、マルクス主義者を辞めたとか、それぐらいのブランディングをしたら注目されるのかなとは思ったりもするんですが(笑)。

斎藤 他方で、日本の新聞やアカデミア、マスメディアはマルクス的な知的な伝統を許容しているし、60代ぐらいの方だと大学でマルクスを学んだという人も多い。「資本主義の限界」みたいなトピックは、いわゆるマジョリティにあたる人たちも割と好きなように思います。

大場 確かに。新自由主義がいいと思っている人は、実は日本にはかなり少ないですよね。

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