誰のための計画経済か

斎藤 例えば中国は、米中の緊張が高まることを見越して、再エネも増やしながらエネルギーを全体的に自国で調達できるシステムを作ってきた。一方、日本は中東依存をずっと続けてきています。中国のように「2040年までに再エネをこの割合にまで持っていく」という大胆な目標を立てて、それに合わないものには、ガソリン車の禁止や実質的な罰金を課すというやり方を――中国は「中国製造2025」で既にやっているわけですが――日本はできていない。今やっているのは、古いシステムを守るための価格統制で、転換のための誘導・介入ができていないということです。

大場 斎藤さんは『人新世の「黙示録」』で、「現代社会は新自由主義で短期的な利益にとらわれている。計画経済的に世の中を変えていくべき」と仰っていましたが、今の日本の経済政策は、ある意味ですでに非常に計画経済的であると思います。ただ、それが「誰のための計画経済か」という点に問題がある。石油業界、電力業界、鉄鋼業界など、一部の既存の構造を優先するだけの補助金・規制になっているんです。

斎藤 おっしゃる通りで、すでに日本って「社会主義的じゃないか」とよく言われる部分はあるんですよね。年功序列だとか、なかなか解雇できないとか、そして何より、国家と大企業が産業を育てるために連結する形で誘導経済をやってきたこととか。

 計画経済が既にあるとするなら、重要なことは「誰が誰のために経済を計画するのか」を民主化することだなと思います。資本主義の計画というのは、特定の大企業や産業を優先するだけのものになってしまっている。気候変動の影響を最も受ける弱者や労働者、消費者のための、利潤だけでない「民主的な計画」にしていくことが、本当の意味での社会主義的な計画になるんじゃないかと思っています。

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・この対談は文藝春秋PLUSにて公開された動画(10月4日、5日公開)をWEB記事用に抜粋・再構成したものです。
・動画では対談の様子をすべてご覧いただけます。
 https://youtu.be/htQViojZttc?si=zMKC_pIJIU5_pxtd
 https://youtu.be/Y0k4Xcg_P-E?si=FB8xRZI4ITgMzhxZ

大場紀章(おおば・のりあき)

ポスト石油戦略研究所代表・エネルギーアナリスト。1979年生まれ。京都大学理学部卒(化学専攻)。同大学理学研究科博士課程単位取得退学。民間シンクタンク勤務を経て現職。株式会社JDSCフェロー。専門は化石燃料供給、エネルギー安全保障、次世代自動車技術、物性物理学。共著に『シェール革命 経済動向から開発・生産・石油化学』など。

斎藤幸平(さいとう・こうへい)

東京大学准教授。1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科准教授。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。著書に『寝ながらヘーゲル』など。

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