石油供給危機の震源地が変わりつつある

――世界各国のエネルギー情勢に目を向けると、ここ最近はサウジアラビアの東西パイプラインが攻撃されたという報道もありました。直近の情勢について、大場さんから解説をいただけますか。

大場 9月11日に、サウジアラビアの東西パイプライン――いわゆる迂回パイプラインの最も大きな経路――が攻撃されました。「日本の命綱がやられた、大変なことになる」という、やや危機感を煽るような報じ方をしているメディアもありましたが、実は8月下旬頃からホルムズ海峡をかなりの石油が通っているという情報が業界に出始めていた。数字を見ると、イランを除けば、湾岸産油国の石油輸出は迂回分も含めて平時の約9割まで戻ってきています。回復が進んでいるというのは、私がだいぶ前から言っていたことです。

 この話をすると、「お前はトランプ大統領のプロパガンダに乗ってるんだ」と批判されるんですが、ようやく石油業界の方たちも「どうやらそうらしい」と分かってきた。イランの船は全く出ていませんが、それ以外の石油の輸出量は迂回を含め9割ほど回復してきています。戦争の状況は予断を許さないですが、石油の供給量という観点では結構戻ってきているというのが、今の印象です。

斎藤 じゃあ、いわゆるエネルギー供給の危機は、ひとまず過ぎ去ったと考えていいんですか? ヨーロッパではディーゼル危機みたいなことも言われるようになっていて、一時期は1バレル115ドルぐらいまで急騰していたと思いますが、今後はどうなりますか。

大場 石油の供給危機の震源地が、ホルムズ海峡でなくなりつつある、ということなんです。今斎藤さんがおっしゃったように、ディーゼルが不足しているのは、ウクライナがロシアの石油設備を破壊した影響で世界中のディーゼル価格が上がっているから。これがアメリカの中間選挙にも影響しそうだとか、アメリカがディーゼルの輸出を禁止するかもしれない、といった別の要素で石油危機が起きています。

 インドでは天然ガスが入ってこなくなったことにより電力危機に陥る可能性が指摘されてもいる。ヨーロッパでは冬を越すためのガスが不足している問題もある。みんなホルムズ海峡に注目して「石油供給は大丈夫か?」と言っているんですが、そこじゃないところで今、危機の火種が出始めている。注目するところを少し変えていかなければいけないフェーズになってきた、という印象です。

次のページ 日本は危機を不可視化している