世界各国で相次ぐ異常気象や、エネルギー資源を巡る国家間の争い。エネルギーの多くを海外からの輸入に頼っている日本は、気候変動とエネルギー危機が重なり合うこの時代にどう向き合うべきなのか。
近著『人新世の「黙示録」』で気候崩壊による恒久欠乏経済に警鐘を鳴らす経済思想家・斎藤幸平氏と、エネルギー安全保障などを専門とするエネルギーアナリスト・大場紀章氏が、日本のエネルギー政策の死角を語り合った(全2回の1回目/続きを読む)。※発言内容は対談時点(9月下旬)のものです
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――初対談ではありますが、すでに面識はおありだと聞いています。お二人が出会われたきっかけを教えていただけますか。
大場 斎藤さんが4月に出された『人新世の「黙示録」』の書評を、私がある電力・エネルギー関連の専門紙に寄稿したんです。
斎藤 そこですごく批判されて(笑)。
大場 はい、内容としては少しネガティブな書き方をしました(笑)。というのも、エネルギー業界の方って、どちらかというと左翼が嫌いな人が多いイメージがある。そういう方たちに向けてまず本を手に取ってもらうために、あえてやや批判的に書くことで、「だけど、ちゃんと読まなきゃだめだぞ」ということを伝えたかったんです。それがXなどで広まってしまって、斎藤さんにバレた(笑)。で、ある方にお願いして、斎藤さんが講演される会に潜り込んで、ご挨拶をさせていただきました。
斎藤 殴り込みに来られました(笑)。大場さんは、現場で数字やいろんなものを見ながら分析されている方で、日本という視点から物事を見ている。私はどちらかというとマクロな資本主義システムや、何百年というスパンの歴史から世界全体を見るというアプローチ。なので、特に「日本において、この思想をどう実現していくか」となると、私の論理の話と、それを現実にどうアプライしていくかとの間には、まだまだ溝がある。大場さんの書評では、そのあたりを専門家の視点で切っていただいた、という印象を持っています。
私みたいな左翼芸人になってしまう(笑)
大場 こんな出会いではありましたが、共感する点もあるんです。斎藤さんはあるインタビューで、高校の頃にエドワード・サイードの本に影響を受けた、というお話をされていましたよね。私も同じなんですよ。
斎藤 サイード、お好きなんですか。
大場 サイードって、積極的に他分野に関して意見を言っていかなきゃいけない、という「アマチュアリズム」を説いてるんですけど、斎藤さんはまさにそれを体現されているなと思うし、自分も改めてそうならなきゃなと思うようになった。全然違うジャンルなんですけど、そこに結構シンパシーを感じています。
斎藤 アマチュアリズムというのは、一歩間違えると、私みたいにただの「左翼芸人」みたいになってしまいますから(笑)。
大場 でも一方で、ただのアカデミシャンになりすぎてもいけない、という戒めもありますよね。
斎藤 そうですね。私が元々マルクスを研究したいと思ったのも、別にマルクスを神様だと思っているからではなくて、気候変動やAIといった現代の問題を批判的に考えるためには、マルクスという思想家が役立つと思っているから。文献研究を行うのも、それを現代の問題につなげていきたいからなんです。ただ、つなげていく過程で、それをヨーロッパで発信するか、日本で発信するかでは全然違いが出てくるから、現場に近い方と議論したり、テレビにも積極的に出るようにしています。
