リモワ誕生の地で紡がれる美学

 古都で紡がれた伝統と革新の歴史。軽量性と耐久性を追求するなかで生まれたアルミニウム製ラゲージは、今なお、旅へのときめきと、確固とした実用性を与えてくれる。


皮革からアルミニウムへものづくりのたゆまぬ歩み

 大聖堂からわずか数百メートルの地に、リモワの前身となる「ギョルツ&モルシェック社」は1898年、産声を上げた。「最初は小さな馬具工房でした。それが移動手段の発達にともない、旅行ケースを製作するようになったのです」とコーポレートコミュニケーション・ブランドヘリテージ部門責任者のダリア・ジェイコブス氏は話す。当時のトランクは、革張りの合板と厚紙を用いたものだったが、「修理可能な、長く使えるものづくり」というDNAからくる素材への探求は始まっていた。

 ブランドの象徴ともいえるアルミニウムが採用されたのは、1920年代のこと。初めは、コーナーやフレームなどの補強材という役割に過ぎなかったが、約10年後には外装全体にアルミニウムを用いた最初のトランクが誕生。1950年には、リモワの顔といえるグルーヴ(溝)デザインが導入される。着想の源は、ドイツの航空機製造会社ユンカースによる世界初の全金属輸送機に施された波型リブ構造だ。

 この加工は、素材の薄さ、すなわち軽量性を保ちながら、さらなる強度を実現した。これがアルミニウム製の現行コレクション“Classic”と“Original”の意匠美の原点となる。「旅行スタイルの変化に合わせ、100年以上にわたり改良を重ね、現代的に進化させてきました」(ジェイコブス氏)という言葉通り、これらのモデルは今のケルンの街のどんなシーンにもしっくりとなじみ、旅への期待を高めてくれる。

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CREA Traveller 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。