世界でも希に見る温泉の宝庫と言われる台湾。その中心地に住む歌人、作家、実業家であり温泉ソムリエの資格も持つ小佐野彈氏に導かれ美麗なる島ならではの極上の出湯を巡る。

※掲載情報は2023年7月当時のもの。台湾ドル NT$1=約4.6円。ホテルは1室2名で利用の場合の室料(税・サ別)。台湾は「先住民」でなく「原住民」が定着しているため「原住民」と表記


スコールに

濡れてきらめく

椰子の葉の

間(あはひ)に白い

湯煙ゆれる

  小佐野 彈

 コロナ禍が明けて、多くの人が再び海外へ出かけるようになった。海外旅行先として人気第一位となったこともある台湾にも、日本人観光客の姿が戻りつつある。故宮博物院や九份などの名所散策、夜市のB級グルメから高級レストランまで、僕の暮らす台湾は観光資源の宝庫だ。

 しかし、「台湾の温泉」を目的に訪れる観光客は、実はそんなに多くない。日本が世界屈指の温泉大国なのは周知の事実だが、同じ環太平洋造山帯に位置する台湾もまた、豊富な温泉資源に恵まれている。面積あたりの源泉の数で言えば、台湾は日本を抜いて世界一と言われている。

 台北市中心部から地下鉄や車で1時間足らずで行ける名湯も多い。日本統治時代に開発された温泉地やマレー系の台湾原住民の人々の間で古来親しまれて来た古湯、山奥の川沿いに滾々(こんこん)と湧く野湯など、そのバラエティーは日本を凌ぐほどである。

 単純硫黄泉や微量の放射能を含んだ強烈な酸性泉など3種類の異なる泉質の温泉が湧く台北市北部の北投温泉は、都心部からの近さと相まって有馬温泉や箱根を彷彿とさせるし、烏來温泉や礁溪温泉、中部の泰安温泉など台湾に最も多くみられる炭酸水素ナトリウム泉は「涼の湯」とも言われ、湯上がりのさらりとした涼感は、1年を通じて温暖な台湾にぴったりだ。アルカリ度が高く、美肌効果も期待できる湯も多い。

 かつては水着着用の温泉が主流だったが、日本式の温泉入浴がブームとなった90年代以降は、男女別で裸で入浴できる温泉が格段に増えた。日本の高級旅館とは趣の異なる、ラグジュアリーな温泉宿も年々増えている。

 日本各地の空港からフライトがあり、東京からであれば3時間ほどの台湾はまさしく「通える海外」だ。ぜひ湯巡りという新しい旅も楽しんではどうだろうか。(文=小佐野彈)

◆烏來(ウーライ)温泉 大自然と伝統文化が息づく台湾屈指の温泉

 烏來は台湾北部、南勢渓(ナンシーシー)の岸に佇む湯郷。ウーライとは当地に住むタイヤル族の言葉で、熱い湯があるから「気をつけて」を意味するという。

 「台北市内から車で1時間と近いですが、豊かな自然やタイヤル族の人たちの文化に親しめる。温泉は美人湯。ヌメヌメとした感触で、日本の基準だと単純温泉でしょうか」と小佐野氏。

 ここではボランドでの滞在を小佐野氏は薦める。厳格な審査を経たホテルやレストランのみが属する「ルレ・エ・シャトー」の一員であり、もてなしの評判も高い宿だ。

「美しい景色のもと、原住民文化の展示やマインドフルネス系のプログラムも充実。心身をデトックスできます」

ボランド|Volando(馥蘭朵烏來渡假酒店)

所在地 新北市烏來區新烏路五段176號
料金 NT$18,000~朝・夕食、軽食込
https://www.volandospringpark.com/jp/

次のページ 台湾の著名人も訪れる名湯