「さすが対談の名手!」

近田 躁状態だと、いろいろな難関を打開しちゃえるもんなのね(笑)。

阿川 そんな風に、躁ならではの豪快なエピソードを、次から次へと一気呵成に由香ちゃんが披露するんですが、時折、北さんが「あのー」みたいな具合に口を挟もうとなさる。由香ちゃんの勢いがものすごいもんだから、私は、「お父さん、少々お待ちくださいませね。由香ちゃんの話が終わったら、異論反論はまとめて伺いますから」と言ったんです。

近田 さすが対談の名手。仕切りが巧みだね。

阿川 由香ちゃんの話が終わった後、北さんに「今の話、何か事実と異なるところはありましたか」って伺ったら、「ほぼほぼ娘の言ったことは事実です。ただ、僕は、由香が躁病になったのではないかと心配になりました」だって(笑)。

近田 上手いオチがついたね。

阿川 矢代さんのところも矢代さんのところで、原稿執筆が順調に進まない時は、子どもの存在が煩わしくなって、「車の中にいなさい!」と閉じ込められたそうですよ。

近田 それで熱中症になったら大変だよね。

阿川 物書きの子どもたちにとっては、家は本当につらい場でした。

近田 ご愁傷さまです。

阿川 うちの父は、よくこう言ってたんですよ。「俺の性格がひどくって、まっとうな家じゃないことは自分でも分かってる。でも、遠藤の家を見ろ、北の家を見ろ。あれよりはずっとましだ」って。

近田 慰めになってるのか、なってないのか。

阿川 後で知ったんだけど、遠藤周作さんも、まったく同じことを龍之介ちゃんに言ってたらしい。「うちは、阿川の家や北の家よりずっとましだ」って(笑)。

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阿川佐和子(あがわ・さわこ)

1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部西洋史学科卒。エッセイスト、作家。1983年から「情報デスクToday」(TBS系)のアシスタント、1989年から「筑紫哲也 NEWS23」(TBS系)のキャスターを務める。現在は、「ビートたけしのTVタックル」「日曜マイチョイス」(テレビ朝日系)、「鶴瓶ちゃんとサワコちゃん ~昭和の大先輩とおかしな2人~」(BS12)にレギュラー出演中。1993年には、週刊文春にて「阿川佐和子のこの人に会いたい」がスタート、現在まで続く長寿連載となる。2012年に上梓した『聞く力――心をひらく35のヒント』(文春新書)は、ミリオンセラーを記録し、年間ベストセラー第1位に輝いた。近著に、『年とる力』(文春新書)。

近田春夫(ちかだ・はるお)

1951年東京都世田谷区出身。慶應義塾大学文学部中退。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。その後、ロック、ヒップホップ、トランスなど、最先端のジャンルで創作を続ける。文筆家としては、「週刊文春」誌上でJポップ時評「考えるヒット」を24年にわたって連載した。著書に、『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』『グループサウンズ』(文春新書)などがある。最新刊は、半世紀を超えるキャリアを総覧する『未体験白書』(シンコーミュージック・エンタテイメント)。
X @ChikadaHaruo

年とる力

定価 1,045円(税込)
文藝春秋
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